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海斗が姿を見せなくなってから十日目の朝。
フォックスは当ても無く、海斗を探し歩いていた。いつでも会えると思っていたからか、この状況になって初めて連絡先を知らないと気づく。
事故に遭ったのでは? 病気で苦しんでいるのかも? 最後に見た海斗の笑顔が浮かび上がり、どうしようもない不安が押し寄せる。
「おい、フォックス。暗い顔してどうした?」
振り返ると、デルタがにこやかに手を振っていた。
「ちょっとね……デルタこそどうしたの?」
「今日は会社が休みだから、エコーの家へ遊びに行こうと思ってさ。エコーの妹が手料理を食べさせてくれるらしいぞ。一緒に行こうぜ」
「手料理?」
「作りすぎたらしいんだ。ガッツリ食べて、暗い気分なんて吹き飛ばしちゃえよ」
能天気に話すデルタの声が、今のフォックスには心地よい安らぎを与えてくれる。
もしかしたら考えすぎだったのかも知れない。友達がたくさんできて、今頃は楽しく遊び回っている可能性だってある。そう思うと、少しだけ気が楽になった。
「そうだね、僕も行こうかな」
「そうこなくっちゃ。雨が降りそうだし、エコーの家でのんびりさせて貰おう」
「雨?」
ふと空を見上げると、先ほどまでは晴れていた空がどんより曇っている。そして、ポツリポツリと雨が降り出し、すぐに勢いを増した。
「結構降ってきたな。そこのコンビニで雨宿りするか?」
「エコーの家はすぐそこだよ。走ろう」
「おう……ん? あいつ、雨の中で何をやってるんだ?」
デルタの視線を追うと、道端でお菓子の箱を持った海斗が俯いている。
「海斗!」
フォックスはずぶ濡れの海斗の下へ駆け寄り、しゃがみ込んで顔を覗いた。
「どうした? 何があった?」
「フォックス……おっ、お父さんがね、美衣さんっていう女の人を連れてきたんだ」
目は真っ赤に腫れあがり、雨では隠しきれないほどの涙が溢れている。
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