【第一章】 コードF フォックス

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海斗が姿を見せなくなってから十日目の朝。 フォックスは当ても無く、海斗を探し歩いていた。いつでも会えると思っていたからか、この状況になって初めて連絡先を知らないと気づく。 事故に遭ったのでは? 病気で苦しんでいるのかも? 最後に見た海斗の笑顔が浮かび上がり、どうしようもない不安が押し寄せる。 「おい、フォックス。暗い顔してどうした?」 振り返ると、デルタがにこやかに手を振っていた。 「ちょっとね……デルタこそどうしたの?」 「今日は会社が休みだから、エコーの家へ遊びに行こうと思ってさ。エコーの妹が手料理を食べさせてくれるらしいぞ。一緒に行こうぜ」 「手料理?」 「作りすぎたらしいんだ。ガッツリ食べて、暗い気分なんて吹き飛ばしちゃえよ」 能天気に話すデルタの声が、今のフォックスには心地よい安らぎを与えてくれる。 もしかしたら考えすぎだったのかも知れない。友達がたくさんできて、今頃は楽しく遊び回っている可能性だってある。そう思うと、少しだけ気が楽になった。 「そうだね、僕も行こうかな」 「そうこなくっちゃ。雨が降りそうだし、エコーの家でのんびりさせて貰おう」 「雨?」 ふと空を見上げると、先ほどまでは晴れていた空がどんより曇っている。そして、ポツリポツリと雨が降り出し、すぐに勢いを増した。 「結構降ってきたな。そこのコンビニで雨宿りするか?」 「エコーの家はすぐそこだよ。走ろう」 「おう……ん? あいつ、雨の中で何をやってるんだ?」 デルタの視線を追うと、道端でお菓子の箱を持った海斗が俯いている。 「海斗!」 フォックスはずぶ濡れの海斗の下へ駆け寄り、しゃがみ込んで顔を覗いた。 「どうした? 何があった?」 「フォックス……おっ、お父さんがね、美衣(みい)さんっていう女の人を連れてきたんだ」 目は真っ赤に腫れあがり、雨では隠しきれないほどの涙が溢れている。
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