【第一章】 コードF フォックス

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暫くして落ち着いた海斗の手をしっかり握り締め、フォックスはエコーの家へ向かった。 玄関で迎え入れてくれたエコーの妹の里香(りか)は、驚いて声を上げる。 「いらっしゃい、デルタさん。フォックスさんも来てくれたんですね……って、どうしたんです!? ずぶ濡れじゃないですか」 里香はタオルを用意すると言って洗面所へ走り、入れ替わりにエコーが姿を現した。 妹とは対照的に落ち着いた様子で、海斗をじっと見つめる。 「タオル持って来たよ。あっ、お兄ちゃん」 「里香、この子にシャワーを。着替えは僕が小学生の頃に着ていた服を使って。まだ、クローゼットの奥に仕舞ってあるはずだから」 「うん、分かった」 里香が海斗を連れて行くと、無言だったフォックスはようやく口を開いた。 「エコー、あの子をお願い。詳しい事は後で話す」 「僕も一緒に行くよ」 「あの子は狙われている可能性がある。一人にするのは危ないし、ましてや連れて行くことなんて出来ない。だから……」 「誰かが守らないといけないんだね」 フォックスの表情から気持ちを汲み取り、エコーは必要以上に追求せず「分かった」と頷く。 信頼のおける仲間の言葉に安堵し、フォックスは玄関を飛び出した。その後ろをデルタが追いかける。 「デルタ、ごめん。僕のせいで面倒な事に巻き込んじゃって」 「何を言ってんだ。俺やエコーが面倒だなんて思う訳が無いだろ」 「ありがとう。デルタがいてくれるだけで、凄く心強いよ」 「いざとなったら、俺の『SIX』で片づけてやる。まあ、日に一度しか使えないけど」 「ブラボーと一緒に検証したんだよね。また詳しく聞かせてよ」 「いいぜ。おっ、駅が見えてきたぞ。ダンススクールは横のビルの一階だな」 二人はビルの前で足を止め、辺りを見渡した。
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