獲物たち、島に集(つど)う

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獲物たち、島に集(つど)う

※本作品は過激な描写が含まれるため、18歳以上の閲覧を推奨しております。  富貴(ふき)島(しま)。神奈川県から少し離れた離島に俺・麻宮(あさみや)透(とおる)は転校することになった。根暗で黒縁眼鏡の俺は本土の中学校で激しいいじめに遭(あ)った。  そのことはもう思い出したくない。心配した両親が心理カウンセラーに相談したところ、この島の高校を紹介された。島民五万人のちょっとした観光スポットとして人気のある島だ。リゾート開発にうまくいったこの島は近年注目を浴びているらしい。どうでもいいけど。  比較的新しい校舎の床を歩く。先生が先導するので、それに従うだけだ。  先生は中川緑先生、二十代前半の優しそうな美人の先生だ。彼女は心理カウンセラーの資格を持つ被暴力生徒保護プログラムの参加者でもある。  被暴力生徒とは、要するにいじめられっ子のことだ。いじめられっ子を保護し、その個性を伸ばすプログラム。高校の特別クラスには被暴力生徒をサポートする生徒が配置され、楽しい学園生活を送ることが約束されている。いじっめ子のような反社会的生徒は幾重(いくえ)にも張り巡らせた検査で落とされており、優秀なサポーターしか、いないというのがプログラムの売りだ。 「パンフレットには目を通してもらえたかな? このプログラムを利用すれば、みんな見違えように生き生きとしてくるの。麻宮君もきっと立ち直れると思うわ」  にこっと微笑む中川先生。いい人だな。  中川先生が教室に辿り着く。そして教室の扉を開く。  教室には十名以上の生徒がいた。一斉に生徒たちがこちらを見る。そして。 「よっ、転校生~、歓迎してやるぜ~」  パンッ、パンッ。とクラッカーが鳴らされた。天井からは「麻宮君、富木島へようこそ~」の文字。どの顔も邪気がなく、笑顔でだった。 「うっわ。やっぱりイケメンだ~。ねえねえ、私本(ほん)多梨乃(だりの)って言うの~。仲良くしようね~」  茶髪の明るそうな女の子が俺の肩に絡みついてきた。こほん、と咳払(せきばら)いが聞こえる。 「本多さんは今回、サポーターではないでしょう。野々宮(ののみや)楓(かえで)さんのはず。野々宮さんに悪いと思わないんですか?」  真面目そうな黒髪の少女がこちらを見てくる。本多さんが舌打ちをする。 「はいはーい。私、透君の恋人候補に立候補しまーす」  心臓が高鳴る。本多さんは色っぽくウィンクしてきた。 「麻宮君、気をつけたまえ。本多梨乃はイケメンと見れば、見境がない。そう色情魔(しきじょうま)、わかりやすくいうなら、ビッチと……」  眼鏡の陰気そうな少年が本多さんの軽いチョップを受けていた。   「本妻さん、せっかくのイケメンですよん。いいんですかい?」  背の高いの女子が黒髪の女の子に耳打ちする。身長は普通くらい。顔は穏やかな笑みを貼り付けている。清楚、そんな感じの子だ。 「本妻って馬鹿なこと言わないでよ。もう」  頬を若干(じゃっかん)赤らめた美少女は握手を求めてくる。 「サポーターの野々宮です。麻宮君、一緒に楽しい学園生活を送りましょう」  野々宮楓、俺が選んだサポーターの彼女はにっこりと微笑んだ。
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