神様、世界の終わりを見せてくれ

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さて、もう一つの月の話をしましょう 月が『凍れる月』になってから 月は満ち欠けを始めました 月は、我々人類から受けた傷の所為で 自らの力の制御を失いました 月は、今や哀れにも 悲しみの深淵にいるのです ゆえに、揺れ動くその心の様が 自らの姿にも反映しているのでございます 悲しみが心の全てを覆う時 月は我々に輝きます 皆様もご存知でしょう 黄金に輝く闇夜の月を それが『満ちる月』の正体でございます 『満ちる月』は 我々に災厄をもたらすようになりました 大量の出血を促し 殺人を誘い 事故を導き 海を地上に惹きつけます そのたびに、我々人類は青ざめ、苦悶し 過去の過ちを悔いました 「我々がいけなかったのだ。どうか許して欲しい」 しかし、制御のない偉大な力は 暴走の限りを尽くしていました ふいに、『満ちる月』は 力を使い果たしたのか自らを削り始めます 皆様もご存知でしょう 白金に輝く闇夜の片月を それが『欠ける月』の正体でございます 『欠ける月』は自らの行為を恥じ 全ての災いを消去しようとします そして、自らの姿をも消そうとするのです 我々人類のために 自らの力が災いしないようにと なぜ月が自己犠牲の象徴なのか よくおわかりでしょう 月は静止し、死んでいるように見えて 思慮深い賢者なのです 大魔道士である月の現在は このような過程を経て今の夜にあるのです 皆様方 どうぞ月の真理を真意に考えてください 月は昔、我々を救ってくれました 今、孤独な月を救えるのは 皆様方しかおりません どうぞ、今宵の月を想ってください 皆様方から見える月は どのような姿でしょう
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