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「まあ、全く話さないのは兄上にも失礼だし無理だよね。わかってるんだけど、嫌なものは嫌だからさ。スターニャが兄上に会いたくないって思ってくれるように仕向けるのはできるかなあって。だからね、スターニャ。なるべく兄上に会わないで?」
ギルバート様の手が私に触れるたびに、私の体は熱くなり、ギルバート様の声が私に届くたびに、私の思考は冷静でいられなくなる。
それらは、私にはとっても悔しく、歯痒いもので、たまにとっても逆らいたくなるのです。
「ね?スターニャ。」
「……。」
「あれ?スターニャ。」
「……。」
「スターニャ、返事は。」
「ひゃっ、わかり、わかりました!」
意地悪な王子様の前では、あんまり意味がないのですが。
ああ、悔しい。
fin
「ところでスターニャ。この資料、兄上にもらったでしょ
。」
「え?はい。見聞を広げるために見ておいた方がいい、と頂いたものです。」
「やっぱりね。」
「どうしてわかったのですか?」
「これ、僕が行きたくないって断っていた国の資料だよ。確か先方への返答期限が今日のやつ。」
「えっ。」
「まだスターニャには言ってなかったけど、僕ら王子には、外交資料を受け取ったらその国にいかなきゃいけないって暗黙のルールがあるんだよ。僕が兄上を避けるものだから、スターニャを使ったんだろうねえ。兄上も策士だねえ。」
「で、でも、ソラリス様はそのようなこと、一言も。」
「伝えたら、スターニャは僕に資料を届けないかもって思ったんじゃない?言っておくけど、この城で一番腹黒いのは兄上だよ。」
「……。」
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