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私が初めてお仕えした王子は、魔法の才は誰の目から見ても飛び抜けているにかかわらず、成長される度に私の頭を悩ませる王子、トルネード殿下でした。 『ボンボ、これおしえてー!』 『は、はい!』 幼少期の頃のトルネード殿下は、容姿から性格まで、天使のように愛らしく、ひよっ子執事の私は、トルネード殿下に名を呼ばれ笑みを向けられる度に、その頬を綻ばせておりました。 しかし、流れる月日は無慈悲にも、トルネード殿下から天使の姿を跡形もなく連れ去って行ったのです。 『殿下……隣のご令嬢は一体どなたですか。』 『ん?知らん。城の外で会った。』 トルネード殿下は、女性となれば身分に関わらずとっかえひっかえ手を出す男と、変わってしまいました。 殿下が15を超えた頃には、殿下の寝台に私の知らぬ女性が居る朝も、珍しくなく、トルネード殿下はその女性達とは、一度関係を持ったら、それっきり。 なんとも、最低な男になってしまったのです。 トルネード殿下と婚約を結ばれるご予定のご令嬢、側室候補の皆様、他にも多方面からとんでくる非難の攻撃を受けるのは、側近執事の私の役目でした。 何度注意しても止まらないトルネード殿下の女癖の悪さに、私はトルネード殿下がいつか刺されるのではないか、一度刺されてしまえ、と思っておりました。
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