責任は人それぞれ(ゼロス)

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 レイバン達と食事をして、部屋のソファーで反省文を書いている。指先がまだ少し痛くて、長時間ペンを持つのが嫌なのだ。そのせいでいつもなら一日程度で書き上がるものが事件後二週間経ってもまだ終わっていない。  進まない理由はそればかりではなく、事件の中心に居ながら監禁されていた為にほぼ何も覚えていないというのもあるが。  とりあえず過去の自分の行いを中心に反省している。  事件後、方々から心配とお叱りを受けた。それは両親も同じだったが、母が拳骨を落とす前に泣き崩れたのは一番こたえた。気丈な母の涙はそれほど強いものだった。  兄達は子供みたいに泣いて縋って謝り倒してきて、少し痛かった。  父は相変わらず静かにゼロスを見て、一言「身に染みたか?」と言われた。本当に敵わない。  ファウストから「謹慎だが、冠婚葬祭は例外とする」と言われた事を伝え、兄の結婚式は出来れば参加したいことを伝えると許された。そしてクラウルもと、言ってくれた。  クラウルにこれを伝えると、嬉しそうな顔で頷いてくれた。  こんな事をぼんやりと思いだしていると、不意にドアが開いて部屋の主が戻ってくる。キッチリと制服を着た人は、部屋に入ると途端に瞳を緩めて甘く微笑む。 「起きてたのか」 「そういつまでも寝たきりではいられない。エリオット様にも筋力落とさないように歩くように言われているからな」  側にある松葉杖を一応持って近づいていく。踵にクッションを入れてあるから、もう短い距離なら杖無しでも歩けるのだが、いかんせんこの人は心配大魔王だ。杖無しだと心配する。 「痛くないか?」 「もう痛くないって言ってるだろ? 太い骨が折れたんじゃないから平気だ」  近づいていくゼロスを迎えに行くように足早に近づいて来た人が、腰に手を添える。そして一日の疲れを癒やすように頬にキスをするのだ。  そのままゼロスはソファーに戻され、クラウルは部屋着に着替える。背中にはまだ新しい傷が残っている。 「気になるか?」 「え?」 「傷」 「あ……」  気にならないと言えば嘘になる。だが、そんなに不躾に見ていただろうかと視線を伏せると、今度は笑われてしまった。 「悪い意味じゃないから気にするな」 「……残るんだなと思ったんだ」  ぽつりと伝える声は、思ったよりも沈んでいた。着替えを終えたクラウルが近づいて、気遣わしげに触れてくるくらいにはまだ、気にしていたのかもしれない。 「刃物の傷はどうしてもな。特に深いから」 「クラウルの体にはあまり、こういう傷跡がないから余計に目立つと思って」 「だいぶ古いのはまだ薄らあるが、暗府となってからは減ったからな」  そう言われると、あるのかもしれない。ファウストのように目立たないというだけなんだろう。 「お前のは残らなくてよかった」 「え?」  不意に掛けられた言葉に顔を上げると、クラウルはとても優しく甘い表情をして見つめる。それだけで僅かに落ち着かない気持ちになるのは、少し恥ずかしかった。 「お前には傷跡なんて残して欲しくないからな。肩の傷も目立たなくなってきた。このまま消えてくれるといいんだが」 「気にしていたのか」 「しないわけがないだろ?」  今は服を着て見えないだろう肩の傷に優しく触れる指先に、ドキリとしてしまう。案じてくれているのに不埒な事を考えてしまうのは、なんだか申し訳ないものだ。 「じゃあ、体を拭こう」  穏やかに言われるが、これにいつもゼロスは抵抗気味だ。  それというのも足の固定具がまだ外れない為、風呂には入れない。体を拭いて綺麗にはしているが、爪が生えそろっていないので温度差に敏感で痛む。お湯は染みるし、絞るのに力を入れても上手く力が入らない。  見かねたクラウルが毎日拭いてくれる。 「いや、タオルを絞ってくれたら自分で」 「俺がやりたいんだ。ダメか?」 「ダメ……じゃ……」  むしろ嬉しくはあるが、正直もうしんどい。  丁寧に服を脱がされ、湯に浸したタオルが心地よく肌を滑る。座ったまま背中に触れるその動きを、どうしても追ってしまう。仕方がないだろう、二週間もお預けだ。 「っ!」  指先が掠めるように背骨の上を伝う。その微かさが余計に切ない気持ちにする。  なのに、唇が背中からチュッと肩口の傷に触れた。 「んぅ!」  肩に触れる髪や、触れている肌からクラウルの匂いがする。傷にキスをされて、舌が触れる。それだけでゾクゾクと背が疼いて、体の熱が上がってしまう。 「流石に二週間も抜いてないと、敏感だな」  手が後ろから胸元へと伸びて乳首を挟み転がす。ゾクゾクと腹の底が疼いていく。耐えがたい快楽に、ゼロスは涙目になって熱い息を吐いた。 「少し、さっぱりするか」 「あっ、やっ……はぁ!」  この『さっぱり』が体を拭くという意味ばかりじゃないのは分かる。前に回ったクラウルは湯に浸したタオルで体を拭いてくれる。だが、拭いたそこから唇が撫でるから、ゾクゾクしてたまらない。 「もっ、いや、だぁ」 「挿れないから心配するな」  それが嫌なんだ。  気遣いとか、そういうので体を許すのは嫌だ。この人を相手に手加減とか、慰めはいらない。全部、愛情を確かめるものでありたい。だからギブアンドテイクがいいんだ。  それに、我慢しているのはゼロスばかりじゃない。クラウルだって同じく二週間していない。でも、したいと思っているのは分かっている。触れてくる指先が、おやすみのキスが、欲しい欲しいと訴えているようなんだ。  手が体を滑り、やがて下肢に到達する。ごく当然のように口でしようとするクラウルを、ゼロスは止めた。 「ゼロス?」 「もっ、欲しい。俺の事を心配しての禁欲なんて止めてくれ。俺は、アンタが欲しい」 「だが」  困った顔をするクラウルの頬に触れて、キスをする。そして手を伸ばして、ゼロスの前に触れた。  触れて興奮していたのはこの人もだ。服の上からだってはっきりと分かるくらい硬くなっている。手の平でそこを指摘するように押し込むと、クラウルの唇から耐えきれない熱い息が漏れた。 「ゼロス……」 「ははっ、勃ってる」  嬉しい。笑って、もう少しグリグリと刺激すると鋭い黒い瞳が忌々しそうに睨み付けてくる。まだギリギリ理性がありそうだ。 「オイタが過ぎるぞ」 「したいって、言っただろ? やせ我慢の分、後で纏めては辛い。俺が死ぬ」 「痛むだろ」 「もう二週間も経ってる。足だけ気を付ければ大丈夫だ」  何よりゼロスが限界だ。もうずっと、側にいてもクラウル不足だ。気持ちは監禁されていた時に感じた痛いくらいの切なさや愛しさに悲鳴を上げているんだ。 「アンタなら、上手くしてくれるだろ?」  ずるい言い方をしている自覚は重々ある。だが、本当に欲しいのだ。  クラウルの黒い瞳が飢えたように見据え、暫くして動いた。軽々とゼロスを抱き上げるとそのままベッドへと丁寧に寝かせ、逃がさないと言わんばかりに上に陣取る。  互いに濡れたような瞳のまま、貪るようにキスをする。久しぶりの疼くキスに腰が痺れていく。指先まで痺れて痛む様なキスだ。 「ゼロス……」 「んっ、ふぅ……」  角度を何語も変えて口腔に舌を受け入れ、与えてくれる快楽を貪る。  腰が自然と揺れて、クラウルの昂ぶりと擦れる。熱く硬くなっているそれが擦れるだけでも気持ちがよくて、ゾクゾクする。  思わず手を伸ばし、クラウルのローブの紐を解いた。そして現れた昂ぶりを、自分のモノと一緒に握り込んで擦った。 「あっ! はぁ!」 「っ! ゼロス!」  気遣わしい声に、何を考えているかが透けてみえる。手の事を気にしているんだろう。  確かに痛い。痛いけれど、それ以上に気持ちがいい。馬鹿になったみたいに先端から透明な液がねちっこい音をさせて溢れてくる。止めろと言われても止められない。 「気持ち、いいだろ? 俺も、気持ちいい」 「っ!」 「アンタも、一度抜けばいいだろ? ガチガチだ」  傷ついていたって感じられる。痛そうなくらいガチガチに勃起したもの。ゼロスはその先端を指先で擦った。穿るように刺激するとトロトロと先走りが溢れてくる。  その手に、クラウルの手が重なる。そうして二人で手を重ねたまま思うままに刺激するのは、頭の中が蕩けるくらいに気持ちよかった。 「あっ、クラウル……はぁ、あぁ、っっ!」 「ゼロス……」  ビクビクと感じながら交わすキスは甘く浸透していく。満たされていくのを感じる。自然と追い上げるように動く手は止まらず、そのままほぼ同時に達した。  余韻の長い絶頂で、ゼロスの腹の上に二人分の精液が散る。互いにとても濃い。それだけ我慢していたんだ。  そうして放たれたものを、クラウルは指ですくい取り後孔へと塗り込む。二週間以上空いていたから硬くなっているかと思ったが、ゼロスのそこはすんなりとクラウルを受け入れていく。 「くぅ、あっ……はぁ……」  日を置いたからか、気持ちいい。指一本が中を掻き回しているのを感じて、その指先が浅い部分を掠めるのを感じて、腹の中がきゅぅぅっと締まるのを感じる。 「気持ちいいか?」  柔らかな声音に頷くと、「そうか」と嬉しそうに返ってくる。  指が二本に増えて、中をくぱぁと開いても抵抗はあまりない。一瞬ヒヤリと空気に触れる感覚。だが捻るように解されてすぐに熱くなる。  ビクビクと体が震える。ビリッと響くような快楽に声が出る。出したばかりなのに当然のように硬く天を向き先走りを溢すゼロスのモノ。そこから溢れたモノを指ですくい奥へとクラウルは塗り込んでいく。  しっかりと解してグズグズにされたそこにクラウルの昂ぶりが宛がわれる。ゼロスと同じく硬く熱くなっている。右足を肩に担ぐようにしたクラウルが、ゆっくりと自らを進めた。 「うっ、あぁ……あぁぁぁ!」  存在を知らしめるように、もしくは体の負担を少しでも減らすように、ゆっくりと入ってくる昂ぶりの熱さを体で感じる。狭い部分をしっかりと広げながら穿たれるのは苦しいが、擦りつけるようにされるのは気持ちがいい。張りつめた亀頭が気持ちいい部分を容赦なく擦りつける。  それだけで腹の中が締まって、それが余計に刺激になってパチパチと目の前で星が飛んだ。どうにも我慢出来ず絞り上げるようになって、ゼロスはクラウルに抱きついた。 「イッたか?」  掠れた声が少し苦しそうに問いかける。しがみついたまま頷いたゼロスの体は汚れていない。中だけで、しかもまだ全てを受け入れていないのに達していた。  中で大きくなって苦しげなのに、クラウルは一度挿入を止めた。中で締めつけているから、どこまで入っているかも、硬さや形さえも分かる気がする。いつもならこの状態でも止めないのに、今日はとてもゆっくり、優しく抱いてくれる。 「クラウル……」 「少し緩まったな。いいか?」 「い、い」  またズズズッと中を擦りながら入ってくる。ゾクゾクっとした快楽が止まらない。自分でも中でイッている自覚があるくらい、気持ちよくて頭の中が白くなっていく。 「凄い、な……食われそうだ」 「あっ、イッ……る! ふぅ、くぁぁ」  ゴツッと最奥へと硬い先端が触れた。ヒュッと喉がなる。張りつめたゼロスの昂ぶりから瞬間的に白濁が溢れてポタポタと散る。  それでもクラウルは止めずに、ゆっくり穏やかに内壁を擦り上げて刺激する。先端が最奥を突く度に、ゼロスは先端から白濁を吐き出し、キュウキュウに中を締め上げながらイッた。 「おかし、なるっ……あっ、とまらな……っ!」  ゴリッゴリッと臍の裏側までも達していそうな刺激が響いて止まらない。疼いてたまらない部分にもう少しで触れてしまいそうだ。  でもそれは同時に、抜けてはいけない部分が抜けるんじゃないだろうか。本能で怖いと感じて、ゼロスはクラウルにしがみついたままイヤイヤと首を横に振った。 「イッ……こわ、いぃ! あっ、突くなぁ!」 「欲しそうに口を開けているのはお前だ、ゼロス」 「いや、だ……っ!! あっ、だめ……あっ、くあぁぁぁ!」  腰を押さえられ、何度も激しく深く突き上げられる。先端が奥深くへと僅かに触れる度、ガクガクと震えて気持ちよさに声を上げた。そして最も深く打ち当てられた瞬間、緩くなっていた最奥を硬く熱い切っ先が抜けるのが分かった。  体の全部が言う事をきかず、ガクガクしならが達するのは意味が分からない。真っ白になって全身痙攣させながら達するのは怖いが、同時に中毒的な気持ちよさがある。容易くは触れられない部分にクラウルの精を受け入れて、焼けるようなのも気持ちいい。  ただ映しているだけの瞳に、クラウルの耐えるような表情が映る。とてもセクシーだ。眉根が切なげに寄って、黒い瞳が濡れて、肌はしっとりと濡れている。この顔を見るだけで、また腹の中が疼いて締めつけてしまう。  抜け落ちる時まで気持ちよくて、ヒクヒクと痙攣する。だらしなく投げ出したまま動けない体を、クラウルが申し訳なさそうに拭いてくれた。 「なんて顔してるんだ、アンタは」 「……無理をさせてしまった。お前を前にするとどうしても我慢がきかない」  しょぼくれた顔をするクラウルを、ゼロスは笑う。そうして軋むような体を起こして、クラウルの頬に触れた。 「俺はそんなに気持ちいいか?」  笑って問いかけると、驚いた顔のクラウルが見上げてくる。それもまた面白い。 「困ってしまうくらい、気持ちいい」 「百戦錬磨の暗府団長が?」 「仕事と一緒にするな。まったく違う。愛しい者と体を重ねているんだ、比べようもないだろ。だからダメだと思っているのに、無理をさせてしまうんだ」  しょんぼりさせてしまうが、嬉しい。正直、この人の過去の相手に多少思う所もあった。きっと自分よりも上手い相手は五万といただろう。手慣れた相手も五万といただろうと。  だがこう言われると、素直に嬉しい。この人が溺れてくれているのが、心地よい。  首に腕を絡めて、キスをする。甘えるキスに、クラウルはポカンとしている。 「時々なら、暴走してもいい」 「え?」 「時々、だぞ。毎回無理されると流石に俺の体がボロボロになる。だから……月に二、三回ならこんな風に抱かれても、構わない……かも」  言いながら少しずつ恥ずかしくなってきて、尻すぼみになっていく。だがクラウルは見る間に目を見開いて輝かせ、嬉しそうにキスをしてきた。 「言質は取ったぞ」 「うっ……ミスったか?」 「なかったことにはしない」 「かもだからな! かも!」  気持ちよくて満たされて、とんでもない事を言ってしまったかもしれない。  少し怖いが、不思議と後悔はない。  なぜならそれほど深く愛されているんだと、実感もできるから。
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