5.違法者 後編

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「一応事務所出るとき連絡してね!」 そう言い置いて、イツキさんは急いで事務所から出て行ってしまった。 がらんとした事務所に残されたのは、あたし一人。 うっわ。 なんかこの感じ久しぶり。 最近は自分の部屋にいる時以外、必ずイツキさんか黒子さんが傍にいた。 それこそノイローゼになりそうなくらい。 突然訪れた解放感に近い感覚になんだかそわそわする。 無駄に席を立って事務所をふらつきたくなる自分を必死に抑えた。 「だめだめ!仕事終わらせないと……」 首を振って目の前のモニターに意識を傾ける。 いつもより広く感じる事務所で一人、また静寂に包まれていった。 結局仕事が終わったのは十七時四十五分。 定時を十五分もオーバーしてのことだった。 「くっそ……」 自分に負けた気がして、思わず汚い言葉が口をついて出た。 目標としていた時間より遅くなるとなんだか悔しいのだ。 内勤で事務職やってると、そんな些細なことを達成感にしないと楽しくないからね。 楽しく仕事をするためにやっていた自分ルールが首を絞めたことは、スルーした。
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