5.違法者 後編

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あの日感じた恐怖が蘇った。 怖い。 心臓から沸騰しそうなほど熱い血液が巡っていく。 それとは対照的に、指先はどんどんと冷たくなっていった。 でもあたしは自分の指を叱咤した。 アスファルトに座り込んだまま、目の前の死神から見えない方の手に握りしめていたスマートフォンを操作するために。 お気に入りに登録してあるイツキさんの電話番号。 そこまで何とか辿り着けば、と。 昔のガラケーじゃないことをこんなにも憎いと思ったことはない。 ガラケーなら、指の感覚だけで電話をかけることなんて簡単だった。 今どの画面を開けているかも分からない。 でも今は自分で何とかするしかなかった。 時間を稼げ。 「すぐに、他の死神が来るよ」 「そうかな?」 「……あんたのことを、死神協会が探してる」 「……」 「すぐにミサキさんが来てくれる。イツキさんだって!」 「………イツキさん、ね」 その名を口にした瞬間だった。 シマの空気が一変した。
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