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あの日感じた恐怖が蘇った。
怖い。
心臓から沸騰しそうなほど熱い血液が巡っていく。
それとは対照的に、指先はどんどんと冷たくなっていった。
でもあたしは自分の指を叱咤した。
アスファルトに座り込んだまま、目の前の死神から見えない方の手に握りしめていたスマートフォンを操作するために。
お気に入りに登録してあるイツキさんの電話番号。
そこまで何とか辿り着けば、と。
昔のガラケーじゃないことをこんなにも憎いと思ったことはない。
ガラケーなら、指の感覚だけで電話をかけることなんて簡単だった。
今どの画面を開けているかも分からない。
でも今は自分で何とかするしかなかった。
時間を稼げ。
「すぐに、他の死神が来るよ」
「そうかな?」
「……あんたのことを、死神協会が探してる」
「……」
「すぐにミサキさんが来てくれる。イツキさんだって!」
「………イツキさん、ね」
その名を口にした瞬間だった。
シマの空気が一変した。
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