5.違法者 後編

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「例えば、精神的に追い詰めて自殺に追いやってもそれは【直接】殺したことにはならないんだよ。だって、結局のところ死ぬのを選んだのはその人間自身なんだから」 「は……サイテー」 「先輩と昔はそれで荒稼ぎしてたなあ」 あの頃は楽しかった。 そう懐かしそうに言ったシマ。 その言葉に、あたしの心臓が数センチ浮き上がった気がした。 目を見開くあたしを見て、シマは嬉しそうに目を輝かせた。 「知らなかった?」 ぽつりと、雨が落ちてきて。 それは瞬く間に大きな雫となって、あたしとシマを濡らした。 どういう意味、なんだろう。 「イツキ、さんが……」 それしか言葉が出なかった。 でもそれすら、あまりに小さくて。 雨の音に解けていく。 「雨かよ、最悪」 ローブで頭を完全に覆い隠したシマが不機嫌そうな声を出す。 彼は、この雨で完全にやる気をなくしたようだった。 雨が嫌いなのは、イツキさんと同じなんだなと。 どうでもいいことを考えていた。
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