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一人残されて、頭を抱えた。
最初から思ってたけど、あの人ちょっと強引なとこあるな。
あたし今どんな格好してると思ってるの。
ニットワンピに黒スキニー。
季節を先取り、春物コート。
伸ばしている途中の髪の毛は櫛を通しただけで毛先が遊んでしまっている。
ラフ過ぎる。
面接とか面談とかする格好じゃないって。
しかも。
「顔死んでる……」
鏡のようになった窓ガラスに映る自分の顔はどんよりと暗い。
顔色がっていうか、なんか表情が。
これで会計事務所の所長に会うのか……。
第一印象最悪じゃない。
そんなことを考えていると。
前触れもなくドアが開いた。
それは本当に突然のことで、気配を感じなかったからあたしはソファの上で文字通り飛び上がった。
顔を覗かせたのは黒髪の男性。
黒スウェットを着て、髪はあちこちがピョンピョンと跳ねている。
若い男性だと思った。
見た感じあたしと変わらないか、少し上くらい。
明らかに寝ていたという感じの彼は、直立するあたしを見てとまった。
視線が交錯する。
男性が首を傾げた。
「あ、ええと……」
そして。
「……何、この半死人みたいな子」
「………」
「どっから入ってきたの。不法侵入?」
え?えーと。
どゆこと。
浴びせかけられたのは不審者に対する言葉。
顔の筋肉がひくりと引き攣った。
え、黒子さん、助けて。
もしかして。もしかしてですけど、この人……。
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