194人が本棚に入れています
本棚に追加
彼に何を言うべきかと頭を巡らせていると。
「えっ、ちょちょっと!」
「何ボーッとしてるの。さっさと出ていきなよ。黒子ー!野良猫入り込んでるよ!」
野良猫のように首根っこを捕まれた。
冗談ではなく、本当の首根っこ。
男性の力で引きずられれば抵抗なんてできっこない。
体をソファやテーブルに打ち付けながらあたしはドアの前まで連れ出される。
痛い。
痛いよ。
あたしが何したって言うの。
痛いのと怖いのと緊張で涙目になったときだった。
「所長!?何してんすか!」
黒子さんの焦った声が聞こえた。
た、助けて。
首を掴まれているせいで後ろ向きになっているから姿は見えないけど、応接室に入ってこようとした黒子さんと鉢合わせしたようだった。
とにかく助けて。
「黒子お前何してるの。野良猫いるのに気づかないなんて職員失格だよ」
「野良猫じゃないっすよ!事務員さんにうってつけの人が来たってさっき言ったでしょ!」
「あれ、そうだっけ?」
とぼけた声を上げてて男性がようやく首を離す。
それが突然過ぎてあたしは受け身も取れずそのままドスンと尻餅をつくことになってしまった。
「いっ……!」
「旭さん……!」
黒子さんが駆け寄って来た。
そのまま助け起こされる。
ひどい。
あんまりだ。
打ったお尻が痛い。
恥ずかしさと惨めさも相まって余計に痛みが増している気がした。
最初のコメントを投稿しよう!