1.あらまし

29/44
194人が本棚に入れています
本棚に追加
/147ページ
そこまで言ってあたしは言葉を飲み込んだ。 カップ麺コーナーに入ってきた一人の男性と目が合って。 「……うわ、まじかよ」 「……っ」 彼はあたしにもたれかかっているイツキさんを見て、それからもう一度あたしを見た。 その目に宿るのは嘲笑の光。 汚いものを見る目。 それが嫌で、怖くて。 胃が絞られるような不快感を示した。 「先……輩……」 「もう次の男見つけてるとか、終わってるね。小野さん」 吐き捨てるように先輩はその場を去って行った。 ほんの一瞬のこと。 わずか一分にも満たない時間だった。 でもあたしは。 あたしには。 「何あれ」 イツキさんの呆気に取られたような声が聞こえた気がしたけど。 も う な ん か す べ て が   ど う で も よ か っ た 
/147ページ

最初のコメントを投稿しよう!