1.あらまし

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何度も腕を振るけど、イツキさんが力を更に込めるとそれすらできない。 彼の指があたしの手首に食い込む感覚がして。 麻痺した心の中にちりちりとした苛立ちが生まれた。 一分一秒だって、ここにいたくないのに。 早く捨てたいのに。 邪魔するな。 「邪魔するなあああ!!」 絶叫が響いた。 自分がこんな声を出せるなんて知らなかった。 イツキさんは怯まない。 「さっきの男が原因かな」 「違う」 「違わないでしょ」 「違う!」 あたしは吠えた。 イツキさんの顔を睨みつける。 うるさくて仕方がなかった。 「あんたに関係ないでしょ!首突っ込まないでよ…!引っ掻き回さないで!!」 「………」 イツキさんは静かな目であたしを見ていた。 そして。 「彼が君の………不倫相手だね」 誰にも知られてはいけなかったあたしの秘密を、暴き立てた。
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