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何度も腕を振るけど、イツキさんが力を更に込めるとそれすらできない。
彼の指があたしの手首に食い込む感覚がして。
麻痺した心の中にちりちりとした苛立ちが生まれた。
一分一秒だって、ここにいたくないのに。
早く捨てたいのに。
邪魔するな。
「邪魔するなあああ!!」
絶叫が響いた。
自分がこんな声を出せるなんて知らなかった。
イツキさんは怯まない。
「さっきの男が原因かな」
「違う」
「違わないでしょ」
「違う!」
あたしは吠えた。
イツキさんの顔を睨みつける。
うるさくて仕方がなかった。
「あんたに関係ないでしょ!首突っ込まないでよ…!引っ掻き回さないで!!」
「………」
イツキさんは静かな目であたしを見ていた。
そして。
「彼が君の………不倫相手だね」
誰にも知られてはいけなかったあたしの秘密を、暴き立てた。
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