1.あらまし

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黒子さんは苦笑してあたしをリビングへと促した。 勝手にいろいろ使って申し訳ないと謝られながら出されたのは、卵粥とスポーツドリンク。 出汁の匂いが鼻孔をくすぐる。 「食べられそうなら是非。食欲がないなら飲み物だけでも飲んでください」 「………頂きます」 湯気の立つお粥を一口食べる。 カウンター型のキッチンで使ったものを洗う音が聞こえる。 あたしはゆっくりとだけど、黙々とお粥を口に運ぶ。 「……旭さん、俺、所長から聞いたんっす。旭さんの今までのこと」 体が強張った。 キッチンは背後にある。 あたしからそちらは見えないけど、黒子さんからはあたしが見えるはずだ。 見えてしまいそうな程の緊張があたしを包む。 「気づいてあげられなくて、申し訳なかったです。旭さんがそこまで追い詰められてるとは思わなかったから」 「………」 「ずっと、何年も……苦しかったっすね」 「……馬鹿な女だと思ったでしょう。許されるわけない、自業自得なんですよ」 「………それは、違うっす」 半分笑いながら口にしたあたしの言葉に黒子さんは少し口調を強めた。 洗い物を終えてテーブルの向かい側に黒子さんは正座する。 その表情は真剣だった。 「人は過ちを犯す生き物っす。どんな人だって、旭さんを馬鹿にすることなんてできない」 「………」 「誰も許しを与えてはくれないんす、この世界は。自分のことを許せるのは自分自身だけだから……なんて俺は思うっすよ」 「黒子さん……」 「もう……許してあげていいんすよ、自分のこと」
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