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「今日からみんなでここで生活するんだと思ったら興奮して昨日は中々眠れなかったんだ」
あたしはぴしりと硬直した。
何言ってんだ、この人。
イツキさんは若干頬を赤らめているようにも見える。
興奮したって。怖いんだけど。
あれ、あたしここで生活して大丈夫かな。
自分で決めたことだけど一抹の不安がよぎる。
「だ、大丈夫っすよ!旭さんの部屋には合鍵作れないタイプの鍵がついてるし、お風呂もトイレもついてる部屋だからそういう心配もいらないっす!」
「え、そういう心配しないといけないこともあるんですか」
「あ、あはは〜」
笑って誤魔化されてしまった。
そこは嘘でも心配ないって言ってほしかったんだけど。
何かの余韻に浸ってるらしいイツキさんは放っておいて、黒子さんに部屋を案内してもらう。
共有のリビングを横切って一つのドアを開く。
「おお」
中は八帖ほどの洋室だった。
言った通り、奥にはもう一つ扉があってバス、トイレが。
しかもユニットバスじゃなくて別個。
これは嬉しい。
収納もウォークインクローゼットがついていて申し分ない。
1Kだと思えば文句のない部屋だ。
一体いくらの家賃なんだろう……。
「キッチンだけは共有なんすけど」
「いや、全然いいです!何か合宿みたいで楽しそう」
一人暮らしをして早数年。
一人はいいこともあるけど、寂しいことも多い。
シェアハウスのようでワクワクしてしまう。
「気に入ってくれて良かった」
「イツキさん」
置いてけぼりにしてきたはずのイツキさんがいつの間にか背後にいた。
「ここはもう君の家だから。よろしくね、旭」
「はい!」
こうして、奇妙な共同生活は始まっていったのだった。
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