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二十二年という長い期間税務署に務めなければ、科目免除を受けることはできないというものだ。
だから税務署上がりの税理士は正直かなり年配の方が多い。
とてもじゃないけど、イツキさんはそんな年齢には見えなかった。
「ほんとだよ、ほらこれ」
言いながら彼は一冊の黒表紙の手帳を棚から取り出す。
見せられたそれに、あたしは目を見開いた。
「…税理士証票」
税理士会に登録している人物を証明する証書。
記載されているのは、イツキさんの名だった。
貼り付けられた写真の中、胡散臭い笑みを浮かべるイツキさんと目が合う。
「イツキさん、今何歳ですか」
「いくつだと思う~?」
「………」
「あっ、今うざって顔したでしょ」
「うざいんだから仕方ないっす」
黒子さんが呆れながらビールを呷る。
ひどいよ黒子~なんてイツキさんが唇を尖らせているのを完全に無視して、証明書をじっくりと見ていた。
そして、気がつく。
「……死神、税理士会?」
頭の悪そうな名称の印鑑が押されている。
なんだこの税理士会。
に、偽物か?
「どうかした?」
「いや……なんか死神って書いてあるんですけど」
「そりゃそうでしょ。俺死神だもの。普通の人間の税理士会に所属できないよ」
「………死神って、なんですか」
「え?」
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