2.転居

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二十二年という長い期間税務署に務めなければ、科目免除を受けることはできないというものだ。 だから税務署上がりの税理士は正直かなり年配の方が多い。 とてもじゃないけど、イツキさんはそんな年齢には見えなかった。 「ほんとだよ、ほらこれ」 言いながら彼は一冊の黒表紙の手帳を棚から取り出す。 見せられたそれに、あたしは目を見開いた。 「…税理士証票」 税理士会に登録している人物を証明する証書。 記載されているのは、イツキさんの名だった。 貼り付けられた写真の中、胡散臭い笑みを浮かべるイツキさんと目が合う。 「イツキさん、今何歳ですか」 「いくつだと思う~?」 「………」 「あっ、今うざって顔したでしょ」 「うざいんだから仕方ないっす」 黒子さんが呆れながらビールを呷る。 ひどいよ黒子~なんてイツキさんが唇を尖らせているのを完全に無視して、証明書をじっくりと見ていた。 そして、気がつく。 「……死神、税理士会?」 頭の悪そうな名称の印鑑が押されている。 なんだこの税理士会。 に、偽物か? 「どうかした?」 「いや……なんか死神って書いてあるんですけど」 「そりゃそうでしょ。俺死神だもの。普通の人間の税理士会に所属できないよ」 「………死神って、なんですか」 「え?」
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