2.転居

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胸の中に拡がったのは何とも言えない恐怖だった。 さっきまで怖くも何ともなかったのに。 イツキさんの言う『仕事』が、もし人を殺すようなそんなものだったら。 死神と言いつつ、殺し屋のようなものを想像してしまう。 そんなものに加担するのは嫌だ。 さっと顔色が変わったあたしを見て、イツキさんは苦笑した。 「何を想像しているのか知らないけど、人を殺しに行くわけじゃないよ」 「……ほんとに?」 「ほんとに。ああ、怖くないって言ってたけどやっぱり怖くなっちゃった?」 「なっ」 「ならいいよ、来なくて。怖いんなら仕方な」 「行きますって!」 揚げ足を取るようなことを言われてムキになるのは悪い癖。 カッとなって、彼の言葉を遮る。 イツキさんは満足そうに笑っていた。 あたしは彼の作戦にまんまと引っかかってしまったのだ。 背後にいるから見えもしないのに。 あーあと言わんばかりの黒子さんの表情が浮かぶようだった。
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