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「じゃあお願いします」
「うん、行くよ」
翌朝。
翌朝っていうかもうお昼近いけど。
あたしはイツキさんの車に乗っていた。
昨晩あたしが寝た後もイツキさんと黒子さんはしばらく飲んでいたようで。
あたしも朝早くは起きられなかったけど、イツキさんは中々起きてくれなかった。
驚いたのは黒子さんだ。
あたしよりずっと前に起きていたみたいで掃除、洗濯、朝ごはんの準備とせわしなく動いていた。
きめ細やかな気遣いに完璧すぎる家事。
これはもう、ね。
あたしみたいな女子力の低い女子は絶対に敵いません。
尊敬するしかない。
「黒子さんはお留守番なんですね」
「うん、まだ事務所が片付いてないし、あいつは死神じゃないからこの仕事できないしね」
「へえ」
黒子さんは死神じゃないんだ。
少しだけほっとする。
いや、まず死神って何だよって話なんだけどね。
「それであの、死神の仕事って何なんですか」
「あー、その前にまず俺の事務所の話をしておくね」
「はい」
「ま、俺が立ち上げた事務所は名目は会計事務所なんだけどさ、実は株式会社なんだよ」
株主はもちろん俺ね。赤信号で車が止まったタイミングでイツキさんが自分のことを指差す。
税理士法人とか会計事務所にはよくあること。
本体の事務所の方で会計業務を行い、株式会社の方で保険業務を行ったり。
そもそも株式会社として立ち上げて会計事務所を営むことだって珍しくはない。
あたしは素直に頷いた。
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