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1.あらまし
草木も眠る丑三つ時。
一人の女が亡霊のように歩いておりました。
そう。
それはこのあたしのこと。
「……呪ってやるぅー!」
二十六歳、小野旭(おのあさひ)。
彼なし、職なし、宿なし。
ない物尽くしの三連コンボ。
それが決まってしまったのはほんの数時間前のこと。
一瞬で大切にしていた全てががらがらと音を立てて消えた。
あまりのことに絶望すら感じる余裕もなく、一人路上をさ迷いながら、情けない声で世界を呪ったのだった。
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