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短くて、不器用な黒子さんの言葉。
それがあたしの腹の底にゆっくりと沈んでいった気がした。
沈んで、じわりと染み渡っていく。
そうか。
きっとあたし、逃げてたんだ。
自分がしたことに向き合いたくなくて。
ずっと誰だか分からない相手に許しを願っていたんだ。
本当は、ずっと、許されたかった。
誰よりも何よりも、あたしがあたしを許せなかったから。
そう思ったら、ずっと飲み込めなくてつっかえていた感情が少しだけ流れていったような気がした。
涙が出そうになってごまかすようにお粥を口に運んでいたからあたしは気付かなかった。
「許されない罪は、もっと重いもんっす」
黒子さんのその小さな言葉に。
「あの、そういえばイツキさんは?」
食器を二人で片付けているとき、ずっと気になっていたことをあたしは口にした。
黒子さんが濡れた手についた水をシンクの中で払いながら答える。
「旭さんが目を覚ます前に出ていったっす。何か済ませることがあるとか……多分もう事務所に帰ったんじゃないすかね」
「そう……ですか」
「何かありました?」
肩を落とすと、黒子さんは首を傾げた。
何って。
そりゃもういろいろありすぎて。
「いっぱい迷惑かけちゃいましたし、多分あたし……暴れて怪我もさせちゃった気もして。だから謝りたいというか」
「気にしなくてもいいんじゃないっすか?多分所長気にしてないし、今頃もう忘れてるんじゃ?」
もう忘れてるってそんなわけある?
だとしたらそれはもう病院に行くレベルでしょ。
適当な黒子さんに内心だけで突っ込む。
「あたしが気にするんですよ」
「ははあ、出た頑固者〜」
「だって……!」
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