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イツキさんは死神。
そしてその仕事は死んだ人間の魂の回収だ。
この間その仕事ぶりを見学したけれど、そのとき彼自身が言っていた。
『再び生を得られるよう、輪廻の輪に還すところまでが俺達の仕事だ』
「輪廻の輪に還すって、物理的にってことだったんですか」
「そうだよ」
曰く。
死神はそれぞれこの輪廻の輪を持っていて、回収した魂をこれに安置するのだという。
全て埋まれば輪廻の輪を通ってあの世へ向かうのだと。
どうやらあたしが思っていた輪廻の輪とは少し概念が違うらしい。
本来の輪廻の輪というのはあの世より向こう側にあって、それを通ることにより今生の記憶を洗い流して新たな生を得る。
でも死神の使っているこれはどちらかというとあの世へ向かうための橋のようなものだとイツキさんは言った。
「いわば簡易輪廻の輪だね」
「簡易ってつけると途端にチープな感じが……」
「それを言っちゃったらお終いっすよ、旭さん」
つい大事な仕事道具にケチをつけてしまったあたしを諫める黒子さん。
そうだった。
相手は所長だった。
イツキさんはそういうオーラがないから、気を抜くとすぐに失礼なことを言ってしまいそうになる。
気をつけなきゃ。
「輪廻の輪に乗せられる魂の数は死神によって違うんだ」
「へえ、イツキさんのは多い方なんですか?」
「どちらかというと少ない方だね。多い奴は二十とか三十もざらだから」
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