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「おい、桃晴。こんなところで寝ていると、いくらお主でも死ぬぞ」
まっさらな雪の上に倒れた柊平を、白い手がつつく。
「とう…せい?」
うっすらと開けた目には、白い着物の袂と、雪の上に流れる絹糸のような美しい髪が見える。
「なんだ、ずいぶん弱っているな」
そこにいるのが妖怪であることは、もう柊平にははっきり分かる。
だが、どうしても顔を上げることができない。
冷たい雪の上に沈む体。
見知らぬ妖怪。
死ぬかもしれない。
店番を任されてから初めて、柊平はそんなことを考えた。
『全て奪われたら消える』
それが命であることを、ここ数日の体の重さから実感していた。
だから、動けない今、残りを取られたら、死ぬしかないのだ。
「まったく、世話の焼けるやつだ。煌鬼も居らぬし、いったいどうなっている」
頭の上で何か言っているが、柊平にははっきりと聞き取れない。
ただ、雪の上の冷たさが、吹く風の冷たさに変わったことを、再び薄れゆく意識の中で感じていた。
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