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「夜魅の首の飾り組紐は、貴方の作だと聞きました。もしかして、撫で斬りの飾り紐も貴方の…」
「夜魅?」
「黒い猫又です。ご存知ないですか?」
「なるほど、猫か。では、撫で斬りというのは刀か」
「そうですが…。百鬼をご存知なのではないんですか?」
「さて。お前によく似た男と、同じ時代に生きたことがあるだけだ。で、その組紐がどうかしたのか」
「もともとの紐が切れてしまって、刀の様子が変わりました。元に戻さなければ、俺との力のバランスが保てないと」
鶴維は、形の良い顎に手をあて、なにやら思案している。
「紅い紐か」
「元はそうです。今は、これとよく似た白い紐を応急処置で結んでいます」
先程、鶴維が巻いてくれた紐を柊平は見る。
「紅い組紐が欲しいということか」
柊平は頷く。
「小僧。その猫と刀を、ここへ連れてこられるか?」
「それは…」
撫で斬りを持ち歩くことを、柊平は躊躇った。
「出来ぬのならそれでもいい。私は2週間後に北へ行く」
そう言われたかと思うと、急に視界が白く鎖された。
それが猛烈な吹雪に巻かれたのだと気付いたのは、雪まみれで山道に投げ出された後だった。
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