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もう一人の自分
麻弓と同じ顔の女生徒は、自分が立っていた窓辺の方からの声にビクッとし、両腕で素速く麻弓を抱くと、左右の烏玉色の羽で包み込み、繭の形になった。その繭から頭を出した彼女は、下に向かって押し殺した声で「声を出すな」と麻弓に命令した後、首を左に傾けて声の主の方を見る。
「おーい。なんだよ。こっちの方を見ていたと思ったら、急に引っ込みやがって」「何やってんだ、お前」
バッサバッサと黒い羽を大きく羽ばたかせた二人の夏服の女生徒が、窓を目指して飛んできた。
「おう、今日子に夏子。おはよ」
「おっはー」「うっす」
挨拶を返す二人は、次々と窓枠に手と足をかけてから羽を畳み、ヒョイッと教室の中に飛び込んだ。
「窓開けたら風が強くて、寒くなってさ」
「あるよな、それ」「だから、そうやって丸まってんだ。マジ、うけるー。麻弓の寒がり、半端ねー」
二人は、ゲラゲラと笑った。
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