637人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
朝比の手によって、するする…と顔の半分以上を隠していた布が解かれた。
金色のシルクのような前髪の間からは、宝石のようにキラキラとした碧い瞳が、ぼおっと空間を眺めていて。
今まで見たことのない綺麗な碧に、朝比は釘付けになっていく。
まるで、西洋人形のような美しさをもっているのに……その瞳は朝比と視線を交わわせた瞬間……
「ッ……」
心臓を一突きするような勢いで、グレアを放ってきた。
どっと溢れるグレアは、まるで暴れている猛獣のようだ。
きっとこのグレアに圧倒されてしまい、紫藤は目隠しをする他、対策を思いつかなかったのだろう。
子供にしては強いグレアを肌で感じて、思わず「……ふふっ、」と口の端をあげてしまう。
この強さのグレアを放てるあたり、Switchとはいえ、一葉はDom寄りなのだろうということが窺えた。
だけど、朝比には敵わない。
ここで朝比がグレアを放てば、一葉は一瞬で戦意を消失するだろう。
「くくっ……こりゃあ、おもしろかね。調教のしがいがあるばい」
しかし、朝比がグレアを放ち、チカラでねじ伏せたところで、それは調教とは言わない。
この2年間、調教師としての知識もたっぷり培ってきた。
その知識と技術を、この実習で最大限に使って……
一葉を調教してやろう、と、そう思った。
「あんた、だれ? いきなり笑うなんて失礼すぎない?」
三日月型にゆがめた口元をみて、一葉はより睨みをきかせた。
警戒心剥き出しの瞳が、グレアをさらに放つ。そんなグレアに怯むことなく、朝比は軽く笑いながら一葉の問いに答えた。
「今日からお前の調教師ばい、3か月間、よろしゅう」
「はあ? ふざけないで! あんたになんか従わないから!」
間髪入れずに、一葉は声を荒げる。
目隠しされている間は怯えた子猫のようだったのに。
先程とは一変…まるで懐かない虎のようだと思いながら「ふう」とひとつ溜息を吐き、一葉をじっと見つめた。
最初のコメントを投稿しよう!