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乱暴な主人、灰色の瞳
一葉は、紫藤に反抗している。
でも、それ以上に紫藤に怯えていた。
そんな一葉は、13歳の時に紫藤に買われたらしい。
一葉を売ったのは、両親に捨てられた5歳の一葉を引き取り、愛情いっぱいに育ててくれた男。詳細は分からないが、おそらく親戚の類だ。
その男は、一葉をSubだと思い育ててきたらしく、しかし第二性の精通によって一葉がグレアを放った途端……手のひらを返したように暴力を振り始めたそうだ。
可愛がって育ててあげたのに、自分にグレアを向けられたのが気に入らなかったのだろう。
Domの精通後は、なんとなく自分でグレアがコントロールできるようになったり、練習したりするのだが……
一葉の場合、その男から暴力を振るわれることによって、自衛の為にますますグレアを放ち、暴走し、止められなくなってしまったのだ。
目隠しをしてしまえば、グレアは塞がれる。
紫藤に買われるまでの間も、一葉は目隠しをされたまま暴力を振るわれていたらしい。
そして一葉がSwitchだと分かった途端、その男は紫藤に高値で一葉を売りつけた。
きっと、それまで育ててきた養育費は簡単にまかなえたはずだ。
だけど。紫藤に買われた後も目隠しが外される事はなかった。
紫藤も、興味本位でSwitchを買ったものの、やはり躾の仕方などもわからず……一葉のグレアを止めることができなかったのだ。
そうなると、Sub同様に扱うためには目を塞ぐしか方法がなくて。
「それで、ウチの理事長に調教師ば寄越せっちゅう連絡があったんやね」
「そういうことだね」
一葉の過去を知っている限りおおまかに話して、紫藤は紙巻き煙草をひとくち吸った。濃く白い煙を吐きながら「それで、どうだい? 彼の調教は」と、今度は朝比に話をふってきた。
その問いに、朝比はニコっと軽い笑顔を浮かべながら「順調ばい」と答える。
朝比がこの屋敷にきて、1週間が経った。
一葉の態度は相変わらずだか、朝比の調教によって確実に成長を見せていた。
「1週間でどげん変わったか、紫藤さんに見てほしかばい」
「オーケー。是非とも見せておくれ、君の実力と一葉くんの変化を」
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