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Prologue or Epilogue 始まり 終わり
最後の見送りをしたその足で、近所の公園へ向かった。
ゆっくり歩いてくださいね、という彼女の要望に応え、いつもより時間をかけてたどりついたそこは、春休みだからか、めずらしくたくさんの人たちでにぎわっている。
ふたつ並んだ小さなブランコ、赤、青、黄、緑色で彩られた、カラフルな滑り台。
楽しげに響くはしゃぎ声に包まれ、穏やかな春風に吹かれながら、頭上を見上げる。
長くしだれた枝を優しく彩る無数の薄桃色は、風になびくたび、限りある命を惜しみなく散らしていく。儚くも美しいその様は、天にどこまでも広がる淡い青に、よく映えた。
彼女がすっと両手のひらを器の形にして差し出すと、まるで誘われるように、一枚の花弁がその中へ舞い降りる。
「桜の花びらって、かわいい形してるよね。ハートみたい」
無邪気に呟く横顔に、「君のほうがかわいいよ」なんて言いたくなる。でも、そんな青臭い台詞は胸の奥底にこっそりしまっておこう。
ふと、元気に走り回り、鬼ごっこでもしているらしい三人組の子供たちに、目をやる彼女。
しばらく見つめた後、何事もなかったように桜の大木へと視線を戻す。が、その瞳は妬みや悲しさ、諦めといった負の感情で揺らいでいた。
「今ここ、チクってしたでしょ?」
胸に手を当てて問いかけると、
「うん……した」
彼女も自分のそこに手を当てて、しおれたように答える。その瞬間、手のひらの器からこぼれた花弁は、はらりと落ち、足もとに広がる絨毯の一部になった。
聞こえてくる。言葉にしない、「ごめんなさい」が。見つめるほどに、ひしひしと。
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