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それがどうしようもなく痛くて、小さな頭に片手を乗せ、くしゃくしゃと撫でてやる。
「だーかーらぁ、それでいいって言っただろ? ずっと笑ってられる人間なんていないんだから」
幼い子供を諭すように、軽く屈んで目線を合わせながら言うと、彼女はコクンと小さく首を縦に振った。
素直にうなずく一方で、その唇は「でも」とか、「だけど」とか、否定的な言葉を紡ごうとしている気がして、とっさに「よし、決めた!」とそれを遮る。
「君の今年の目標は、『もっと悪い子になること』です」
「えー、何それ」
くすりとこぼれた笑みとともに、暗く沈んでいた彼女の表情が明るさを取り戻し、やわらかにほころんだ。
「もっとわがままを言えるようになりなさい」
どこかおどけた口調で言って、彼女と笑い合いながら、ほんの少し、心が痛む。
けれど、あの子に胸を張って伝えたい。
僕らはもう、大丈夫だよ、と。
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