手の中の遺産

　ビル風にやられて傘が壊れた。
　折角のお気に入りだったのだけれども、骨が折れて布が剥がれてしまってはもうどうしようもない。新しく買いに行く事にした。
　折りたたみ傘はあるから長い傘が欲しい。傘を沢山扱っている雑貨屋で色々と手に取って見る。
　十二本骨は丈夫だと聞くけれど、骨が多い分少し重い。ジャンプ傘は開くときに便利だけれどもデザインが好みじゃない。
　なかなか気に入ったものを見つけられずにいたのだけれど、突然真っ白い傘が目に入った。
　開いてみるとタマネギみたいな形をしている。それを頭の上に差してみて呟く。
「いいね、タージマハルみたいだ」
　それを買うことにして、雨の日を思う。
　雨が降ったら異国の遺産を持ち歩くのだ。