遊園地

20/20
5189人が本棚に入れています
本棚に追加
/193ページ
「………ん、」 「起きたか。もうすぐ着くぞ。」 バス内はやけに静かだ。 「…なんか静かだな…」 「あぁ、ほとんど疲れて寝てる。」 まぁそうなるか…シートも柔らかいしな… 「…へぇ、恭弥は寝たのか?」 「いや?別にそんなに疲れてないしな。」 体力の差か? いやそれよりそもそもあまり寝ないタイプだったような気がする。そのうちガタがきそうだな。 「……。」 窓の外を眺めれば自然が多く学園の近くであることが窺える。 戻ったら夕食を摂ってから少し風紀の仕事をしなくては… 古賀宮さんに任せている案件もあるし… 「まーたなんか考え事ですか、風紀委員長さんは。」 後ろから体重をかけられる。 「っ、重い!離れろ。」 「断わる。今日は風紀のことはいいって言ったろ。…夕食何がいい?」 もう行事は終わったし学園に戻ったら俺は風紀委員長だ。 それに夕食は1人で… 「良くないし夕食は一人で食べる。」 「…人目が気になるなら俺の部屋でもいい。」 ……確かに人目は気になるがなぜ恭弥の部屋にわざわざ飯を食べに行くんだ。 「…なに、お前の部屋ルームサービスでもあるのか?」 「ん?あるけど。」 ………あるのか。 あの広さといいルームサービスといい…まるでホテルだな。 「でもあんま頼まねぇな。自分で作るし。」 え、 「お前料理とかするのか?」 「適当なやつな。誰でも出来るようなのしか出来ねぇ」 それでも驚きだ。まさか御宮司財閥の跡取り息子様が自炊出来るとは。 「…意外だ。」 「そうか?深夜3時にルームサービス呼ぶほど馬鹿じゃねぇよ俺は。」 深夜3時。 おいこいつ…いつ夕食摂ってるんだ。 「……恭弥、平均してお前の夕食は何時だ?」 「ん?12時から3時?」 ありえない。 そんな生活身体に悪いに決まっている。こいつは自己管理も出来ないのか? 「…お前それどうにかならないのか。時間。」 「無理だろうな…課題とか生徒会のこととか他にも色々あるし…」 恭弥は…忙しい人だ。それは知っているがこんなめちゃくちゃな生活を送っているなんて思わなかった。 それを、知っていて放っておくなんて罪だろう。 「恭弥、夕食だけでも必ず8時に摂れ。食堂はバルコニーが空いてるだろう。」 「無理。」 なんで即答するんだ。 「理由は?」 「摂らなくても大丈夫だと知ったらもう規則的に戻れないだろ。サイクルも違うしな。あとその時間はいつも生徒会の仕事してるから。」 こいつバカなのか?大丈夫じゃないから夕食の時間だけでもと言っているのに。 「大丈夫なわけないだろう。とにかく食堂に…」 「行くのも面倒臭い、時間が勿体無いだろ。」 こいつ… 「じゃあルームサービスでいい。」 「他のやつを部屋に呼ぶのが嫌だ。」 お前散々俺を中に招いてたろう…?どうなっているんだ。 それに有栖川も… 「俺のこと入れる癖に何を言っているんだ。」 「…不可抗力の場合と、あと好きな奴は別。それ以外は本当に追い返してるし一歩も入れない。」 好きな奴…?なんだそれ、お前有栖川も…好きだっていうのか? 「なんか変な事考えてるだろ。…慧斗は特別。わかるか?」 「…っ、な…お前…、 …。とにかくルームサービスが嫌なら俺が夕食を食わせてやる。倒れられるのが1番迷惑だからな。」 そう言うと、目を瞬かせた後に微笑む。 何でそんな顔するんだ… 「なんだ。」 「…通い妻っぽいなと。」 は? 誰が通い妻だ、というか世話しにいくだけでなぜそうなる。 「…馬鹿か。とにかくこれからは持っていくから…」 「俺の部屋で作って食べれば良くね?時間勿体無いだろ?」 …確かに。時間は有限だからな。 「…わかった。今日は食堂でいいだろう。」 「いや、そのまま俺の部屋来い。さっき忘れるなって言ったこと…寝て忘れたか?」 忘れるな。 …あ…、 「なっ、あれは一方的に…」 『生徒の皆さん、着きましたよ。お隣の子が寝ていたら起こしてあげてくださいね。お気をつけてお降り下さい。』 「ほら、着いた。行くぞ。」 「は?!待て、おい!」 腕を引かれて中央の通路を進む。幸い殆どが寝ていて、起こされてる途中だったのか視線はない。 そのまま外に出ると澄んだ空気が肺に入ってくる。 「さぁ、俺の部屋に行こうか?」 わざとらしく笑って手を繋がれる。 くそ、何でこんなことに… 抵抗するのも無駄だと感じてそのまま歩みを進めた。
/193ページ

最初のコメントを投稿しよう!