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これは…
なんというか…
嫌な予感しかしない。
流石に、あんなこと…というか、告白…されたその晩相手の部屋に泊まるだなんて馬鹿な真似はしない。
「…断わる。」
「どうして?」
首を傾げて見つめられるといつもより恭弥が幼く見えた。
朱い瞳が、甘い光を讃えている。
「…っ、お前は俺を…そういう目で見てるのか?」
これは、単純に聞きたかったことだ。
周りはごく当たり前のように色事を楽しんでいるが俺には分からないことがある。そもそも男をそういう目で見られるのか?女ではないのに、欲情するんだろうか?
「当たり前だろ。」
「…男だぞ?」
念押しする。
俺には理解できないその性別の壁を恭弥はどう考えているんだ?
「だから何?」
“だから何?”
いや、何って…普通は男同士でそんな…欲情なんてしないだろう。
「質問の意図が伝わってないのか…?恭弥は…その、男に…あぁ、なんというか…性的興奮を示すのか?」
「ふっ…、言い方やばいな」
そう言って恭弥は笑う。
何がやばい、だ。そのまま伝えただけだろう。
「何がいけないんだ。」
「いや、いけないわけじゃないんだけどな?なんというか、言い方が初心で可愛いなと思って。」
だからその可愛いとかいう感覚が謎なんだ。男相手にどうやったら可愛いだとかそう言う感情が生まれるんだ。
「…可愛いとか、なんでそんな…理解できない。…というか質問に答えろ。」
「ん?つまり慧斗とセックスできるかどうかってことだろ?」
なんでそんな直接的な表現が出来るんだお前は。
羞恥とか絶対ないだろこいつ。
「……っ、そ、そうとも言うが…」
「答えは…出来る。というかしたい。俺としては全然問題無い。」
問題…大有りだろう。そもそも俺で勃つ人間がいるなんて考えられない…女が自分に興奮するならまだ分かるが。
「そう簡単に結論を出すな。よく考えたか?俺は男で、女とはかけ離れているのに…、勃つ…とか、ないだろ…」
「え?お前今更そんなこと心配してんの?昨日の今日で?つかすぐそこで抜きあったの記憶から消えたのか?」
シャワールームの方向を指刺される。
「っ…!お前……それ、…それは…もう思い出したくない…」
「俺は慧斗で勃つけど?
というかお前がそういう感じなら逆に慧斗は俺とシても大丈夫なのか聞きたい。」
恭弥、と…?
しまった。
全くその事を考えていなかった。というより考えたくなかったのかもしれない。
考えた先に自分の…恭弥への気持ちが待っていると分かっているから。
「…俺、は…」
どうしよう、大丈夫かと聞かれたら恐らく勢いで大丈夫じゃないと言ってしまいそうだ。
しかし、拒否反応はない。恥ずかしさや混乱があったとしても…本気で拒んだりすることはない。
でも…絶対大丈夫かと言われるとそうは言い切れない。
「…まぁまだ分からないだろうし試してみればいい。」
「試す?どうやって…」
ぐい、と恭弥の身体に寄せられる。
「少しずつ段階上げていって無理そうなら言ってくれればいい。男同士だしな…どうしても受け入れられない部分も出てくるだろうし。」
「だ、段階…」
どういう手順で進むんだ…?!
そもそも最終地点はどこまでに設定するつもりなんだ。
「まずは手を繋ぐとか。そういう感じで。」
「手は繋げるだろう。別に。」
普通に繋げば目を細められる。
なんだ…?
「あー、慧斗……“お前のことを恋愛対象として見てる男と”手を繋いでる自覚は?」
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