新入生歓迎会

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成瀬に連絡を取るとどうやら口止めはしてくれていたようだ。 「恭弥、お前昼の…あー…その、」 どう切り出せば良いか迷って歯切れのない言葉が紡がれた。 「女装?」 ここまですっぱり言われると逆に話しやすい気もするな…まぁいい。 「あれは決して俺の趣味じゃなくてだな…」 「わかってる。白の詰襟目立つしな…そういうことだろ?」 恭弥は話が早くて助かる。 「あぁ。」 「でもまぁ見てみたかったけどな。天女様?」 馬鹿にしているだろこいつ… 「…お前な。」 「似合うのはわかりきってるからな…お前は顔が中性的で美人だし…おまけに可愛いときた。似合うに決まってる。」 な、なんだ?…色々言われすぎて混乱する。 何一つ俺の特徴に掠ってすらいないしもはやお前の言ってるのは誰だ。というレベルなんだが… 「…何言ってるんだお前は。」 この言葉何度目だろうか。数えるのも嫌だと思うくらい何度も言っている気がする。 全く、恭弥の感覚は分からないことだらけだ。 そうこうしていると部屋に到着する。 そのまま恭弥が立ち止まってこちらを向いた。 「慧斗、悪いんだが俺のカードキー取ってくれないか?」 「…あぁ、何処だ?」 ジャケットの内ポケットのどこかと言われる。どこかってなんだ。どこかって。 「…失礼。」 ジャケットのボタンを開けて探る。ペンやらなんやらが入っていて探しずらい。 「…悪いな色々入ってるんだ今日は。」 「入りすぎだろう。…というか本当にあるのか?」 あるのか怪しくなり見上げると少し驚いた顔のあとににやりと笑う。 「…さぁて、何処だったかな。色々あって何処に入れたんだか…全部探してくれないか?」 「管理くらい自分で出来ないのか。だらしない。まぁいい、探してやるから動くなよ。」 色々探ったわけだが見つからない。 マスターキーだし紛失したらまずいんじゃないか? 「…あれだな、こう、密着して探されると痴漢されてる気分だ。」 痴漢。 それは俺にべたべたと触られたら嫌だろうが… 「…ん、悪い……」 「あー、待って違う違う。からかっただけだ、そんな顔するな。…寧ろもっと触ってくれてもいい。」 いやそれはおかしいだろう。それに俺も好きで触っているわけではない。 「…ジャケットにはないようだが。」 「ならズボンだな。」 ……。 何も言わずに恭弥のポケットに手を入れると少し驚かれる。 「…っと、流石にいきなり下半身は驚く。」 「…悪いな?俺はどうやら痴漢に間違われる男みたいだからな。つい触ってしまった。」 べ、と舌を出す。すると目を見開かれた。 …ふん、人を痴漢だなんて言うからだ。ちょっとした仕返しにはなったな。 「あぁ…、俺が手を使えなくてよかったな慧斗。」 「ん?なに…、」 「これ以上俺のこと煽る真似したら我慢出来なくなるかもな。…それともそっちの方がいいか?」 耳元で囁かれる声に何故かぞくぞくとした感覚が背中を抜けて思わず身体が跳ねた。 「っ、」 「あー…悪い。…というか…結構至難の業だぞ?我慢するのは…」 参ったというような顔をしているが俺の方が…まぁいい… 「…よくわからんが…ズボンのポケット探らせて貰う。…いいか?」 念の為確認を取ると了承が返ってくる。 少し遠慮がちに反対のポケットに手を入れると硬いものが手に触れた。 「…これか?」 取り出したのは銀色のカード、重厚感があり金の装飾で縁取られている。 「あぁ、それを通せば開く。…この学園のほとんどの部屋がな。」 「…一体どこの部屋まで開くんだ?」 カードを通すと機械音がし、解錠を告げた。 「…例えばお前の部屋とか?」 「……は、」 恭弥の方を振り向けば笑っているのが目に入る。 「…冗談に決まってるだろ…全く素直で可愛いな、慧斗は。」 冗談で心底良かったと思う。 無断で入られたらそれはもう困る。 「……心臓に悪いことを言うな。」 「流石に寮の鍵は開かないようになってるからな。安心してもらっていい。もちろん招かれたら行くけどな?」 招くわけないだろう。 そんなことを思いながら部屋に入るとふわりと安心する香りが漂ってくる。 「…、何か焚いているのか?」 「ん?いや?何も。」 何も。と帰ってきた。じゃあなんなんだ? この香りはどこかで嗅いだとこがある気がする… 記憶を辿る。どこかで… 「っ…、」 思い出した。その酷く落ち着く香りは…
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