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朝。オヤジは自分で2枚トースト焼いてそそくさと仕事に行ってしまった。母は自分自身とオレの分の朝食をつくった。やはりトースト、スクランブルエッグ。極めて軽い朝食だ。 食パンの消費量が多い。 姉ちゃんは2日前から帰ってこず。弟は部屋に引きこもってまだでてこない。 弟の場合いわゆる引きこもりではなく夜な夜な遊び回って明け方いつのまにか帰ってきていて、実のところ居るか居ないかわからない。 オレは高校に間に合うように起きて母が朝食を作ってくれればそれを食べるし、母がまだ寝ているようなら食べずに登校する。母は家事のために生きていないのはわかる。オレが学校に通うだけの人生じゃないのとおなじだ。 オレの家族はそれぞれが独立した歯車みたいなもので、回っているが噛み合っていない。それでは歯車の意味がないと思うかもしれないが、きっとなにかの拍子で噛み合って回りだすのかもしれない。 思えばオレの両親は不思議だ。姉やオレの進学に関しては指図はなかった。弟がグレ気味で中学にまともに通っていないことはわかっているし、学校から呼び出されていろいろ指導とも注意ともイヤミともつかない言葉を生徒指導担当教師から言われても、母は素知らぬ様子で 「自分の人生は自分で決めればいい」と言ってのけた。 弟の態度に変化はなかった。 父に至っては仕事の関係で朝早い。家事も自分でやってしまう。かたわらから見ていてこの夫婦は夫婦として機能しているのかわからない。 そもそもオレは本当の子供なんだろうか?そんな気がしている。 「ごちそうさま」 食べ終わって皿を台所へ持ってゆく。母ははいはいといいながら受け取り洗い始めた。 深く考えても仕方ない。今日一日を消化しよう。明日のこと昨日ことも深く考えないようにしよう。 玄関で不意に居間の方をみた。 台所の方から流水で皿を洗う音がする。
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