ニーナ・ロウ魔術師養成学校

1/1
18人が本棚に入れています
本棚に追加
/32ページ

ニーナ・ロウ魔術師養成学校

 ニーナ・ロウ魔術師養成学校は、その名の通り魔術師を育てるための学校である。  運営は世界魔術師ギルトが担っており、基礎コースの三年は学費無料。申請書を提出し、ちょっとした面接を受ければ、誰でもが魔術師になるチャンスを手に入れる事ができた。  一口に魔術師と言っても、方向性はさまざまである。  かつては自ら師を探し、頭を下げて弟子入りを志願した。そこで運よく弟子として貰えたならば、その後は良いようにこき使われながら魔術を学んでいくことができる。だが、出向いたからと言って必ず弟子になる事が出来るとは限らず、路頭に迷う者もいた。  それを解決すべく、魔術師ギルトで弟子を紹介するシステムが作られた。  志願者を登録制にし、ギルド側であらかじめ確認を取った後に紹介状を発行した。それを持って行けば、少なくとも門前払いという状態は避けられた。  だが、更に問題はあった。  そもそも辿り着けずに命を落とす者が出るのである。  魔術師の中には、とんでもない辺境に住んでいる物もいたからだ。  自分の研究に都合が良いから。あるいは静かな環境で研究に没頭したいから。理由は様々だった。  ある程度の魔術を身につけた者からすれば、移動について悩む事などまず無かった。  大抵の場合、転移の魔術を習得していたからだ。  だが、まだ何の魔術も使えない弟子志願者にとってみれば、それは死の旅に等しかった。  また、魔術師側からも紹介を受けて弟子にはしてみたが、あまりにも使えないという苦情が寄せられることもあった。  そう言った問題に対処すべく作られたのが、魔術師養成学校である。学校の名前は、提案した当時の魔術師ギルドの長、ニーナ・ロウの名をそのまま冠している。  志願者はここで三年間、みっちりと魔術師としての基礎を叩きこまれる。  これにより、弟子入りした時に、師の求める最低限の事は出来る状態からスタートする事ができる。  さらに卒業後の弟子入り先や、その他の進路についても学校の方で面倒を見るようになっていた。  この養成学校が出来て以来、弟子入り志願者は年々増加の傾向にあった。  日ごとに暖かさが増していく頃。  ニーナ・ロウ魔術師養成学校は新たなる生徒を迎えていた。  この養成学校で新入生かそうで無いかを見極めるのは簡単だ。正門をくぐってすぐに、学園創設の功労者ニーナ・ロウの巨大な石像がある。新入生は、まずこれに驚かされる。  それを見上げてぽかんとしている生徒は、まず新入生だとみて間違いない。  上の学年の生徒は、それを見てくすくすと笑っている。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!