11人が本棚に入れています
本棚に追加
傘侍
むせ返るような湿気と服の中に籠もる熱気。今年もまたこの季節がやってきた。
ーー梅雨。
ゆううつなつゆ。
回分にしたいがどうもならない程に湿気が鬱陶しい。しかしそれは梅雨が持つ本当の不幸ではない。その訪れと同時に現れる厄介な刺客。傘辻斬りこそが諸悪の根源だ。
傘辻斬りは主に駅の上り階段に現れ、奴らには様々な流派が存在すると聞く。
柄を持ち大きく得物を降る振子流。
同じく柄を持ちながらも、大きな突きを繰り出す洋剣流。
畳んだ胴を持ち小刻みに切りつけてくる小太刀流。
階段以外には得物を反対に持って振る孔球流も存在する。
俺が知るだけでもこれだけあるというのに、ネット上にはさらなる流派の目撃情報が流されている。
それほどに傘辻斬りの凶行が梅雨時には蔓延するのだ。
最初のコメントを投稿しよう!