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台所に立つ透の背をちらりと眺めて早織は三人の少女に話を続ける。
「あなたたちがね、透を気になるのは分かるけど、もし、それが恋心だったら叶うことは絶対にないの。透は仲良くしようとすれば仲良くしてくれる。でも恋人にはなれない。透の胸には彼女がいるからね」
早織の視線は写真立ての少女に。三人の少女も金髪の少女を見る。
「その人が彼女さんなのですか?」
その問いに早織は首を振る。
「違うの。彼女が透の初恋の相手。透は彼女がどこにいるかも知らないの」
火にかけられているやかんがカタカタと鳴る。
透はティーパックを取り出しながら、女の子たちの話を黙って聞いていた。
「透は今は優しいけど、昔はいじめっ子だったの。その透を優しくさせたのが彼女なの。女の子には優しくして。それが彼女からの透のお願い。それを馬鹿みたいにずっと守ってるの。大好きな女の子との約束をね」
「その人はどこに?」
少女の誰かが聞いた。
「分からないよ。海外から転校してきて、すぐに海外に転校していった。透に見つける方法はないの」
部屋に紅茶の香りが漂う。
「どうして、お姉さんはそんなことを私たちに教えてくれるんですか?」
早織は、にこりと三人の少女に笑ってみせる。
「私の初恋も透なの。でも透は見向きもしてくれない。まぁ私は勝手に遊びに来てるけどね」
透は、台所の窓から外を見る。
あの日もこんな風に雨が降っていた。
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