雨の日にしか起きない事

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雨の日にしか起きない事

ある梅雨入りしてからの事。 天気予報では、梅雨入りの発表をしていた。 でも、直ぐに長雨になるとは、限らないから僕は、今日の天気予報を見て傘は、必要ないと判断して学校に向かった。 帰りに電車に乗っていたら、降りる駅までの間に降りだしてきた。 (あーあ……。) 降りた後、歩いて自宅まで帰るのには、この雨じゃ~……。 かなり濡れてしまう……。 傘を買いに行こうと近くのコンビニに行ったけど……。 皆、僕と同じように考えていたのか、一つも見当たらない。 売り切れの札。 (……覚悟を決めるか……。) 仕方なく濡れて帰ろうとしていた時に、 「……おい。君…。」 僕に声をかけてきた男の人。 「……は、はい…?」 その人は、全く僕は、知らない。通りすがりの人。 「傘、無いのか?」 「……は、はい…。」 その人は、傘をさしていた。 その人の片方の手にもう一つ、閉じた傘を持っていた。 その人か閉じた傘を僕の方へと近づけた。 「…使いなさい。」 ………………え? 僕なりに思った事。 普通、一人なら傘は、一つでいいよね? 二つ持ってるのは、誰かの傘だよね? ここは、駅周辺。 だから、その人は、他に誰かを待ってて傘を渡すつもりだった。 なんだか勝手に悪い気がしてきた。 「…いえ…!…あの…」 「いいから。」 無理に押し付けられてしまった。 確かに傘は、借りたいけど……。 「…あの…本当に良いんですか…?…誰かのために…」 「良いんだよ。…どうせ……。」 なんだか顔がこれ以上言いたくないような感じがあったので………。 「…じゃあ…お借りします。…あの、明日もこの時間に居ますか?…返さないといけないので……。」 「ああ。居ると思う。…あとさ…。」 ……あとさ。?…何だろう…? 「…そのまま傘、使ってていいから。明日、雨朝から降るから、そのままその傘使えばいい。」 ……………え? ………それ意味ないよね? 「……いや、返さないと…って……」 「いいから。そうしろよ。」 そう言って行ってしまった。 初めてそんな事を他人に言われるとは……。 …よくよく考えたら、単に逢う約束をしたようなものだ。 傘を借りるかわりに。 あの人がもう一つ傘を持っていた訳は、梅雨明けする時に知ったんだ。 雨が降れば必ず現れる。 傘を持っていても。 あの人が必ず待っていた。 傘は、今も僕の自宅にある。 梅雨明けしてもある。 雨が降ってなくてもある。 「…あの時の傘は、お前に渡すための物だ。」 ずっと。 待っていた。 僕を。 僕が傘を。 持ってない時を狙っていたかのように。 「君は、いつから僕を知っていたの?」 「お前が生まれると解った時から。」 きっと………………。           完。
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