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 薄暗いダイニングテーブル、一人で食事を済ますと、男は読書灯をともし、スケッチブックを開いた。36色の色鉛筆の缶ケースを開け、右から4番め、いちばん明るい灰色を手に取り、鉛筆削りに差し込むとひと回し、ふた回し、丸みが残るように丁寧に削った。  シュッシュッシュッシュッシュッシュッ・・・・  昨日描いた首回りから下に毛を描き加えていく。次によく尖らせた右から3番めの少し濃い灰色で、その線を1本1本丁寧になぞる。  スーッスーッスーッスーッスーッスーッスーッ・・・・ 「ふぁ~」 男は大きなあくびをする。そして、何となく水色の鉛筆を手にとる。それで毛を描こうとして、すぐに思いとどまる。 「いけない、いけない。水色なんかどこにも無いのに・・・。そんなんじゃ、印象派だ」 細密画はもちろん写真を手本にする。男も最近はタブレット端末を使っている。色鉛筆の芯を写真に重ね、色を確認して塗らなければならない。印象で描くと味わいのある個性的な絵にはなるかもしれないが、実物とは違う画家の想像画になってしまう。ひまわりは強烈な黄色・・・?はたしてそうだろうか。男は水色の鉛筆をしまうと、灰色に持ち替え、また1本1本描き続けるのだった。  シュッシュッシュッシュッシュッシュッ・・・・ 「ふぁ~」 これではまるで、ふわふわの羊を一匹二匹数えるのと同じことだった。男はこっくりこっくり居眠りをしてしまう・・・。
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