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カラカラと水飲みのボールが回る音が聞こえたような気がした。男は真っ暗なリビングのソファーで目を覚ました。
「クロエ?」
部屋は静かだった。男は読書灯を点けた。がらんとした静かな部屋がぼんやり浮かび上がった。クロエ、男の飼っていたテリアのお気に入りのケージはもうなかった。柵を揺らすガチャガチャいう音も、水飲みのボールが回るカラカラという音もしなかった。
(リアルな夢だったな)
男はソファーから起き上がり、ダウンライトを点けた。ダイニングテーブルには、スケッチブックが開いて置いてあり、描きかけの犬の絵があった。
「クロエ・・・」
男の目からぼろぼろと涙がこぼれた。
"クロエ”(色鉛筆 たやすもとひさ画)
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