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うとうとしていた紫が目を覚ましたのは自室のドアがノックされたからだ。
「はい?」
「紫、起きてる?」
「うん」
「そろそろ、夕ごはんにするからダイニングに来なさいね」
いつのまにか帰っていた母親の声にハッとして返事をした。
「今行く」
ダイニングに向かうといつの間にか父親も帰ってきており両親は時間通りに届けられていたデリバリーのディナーセットをテーブルの上に並べているところだった。
「お、葵の分も入ってる。今日はこっちを食べようかな」
父親がそう言ってディナーボックスを手に取ると母親がそれをひったくった。
「ダメよ! あなたは高血圧なのよ? 葵の分なんて脂肪も糖も多いんだから」
「いいじゃないか、1日くらい」
「ダメよねえ? マザーG。家にいるときくらい体に気をつけないと」
マザーGはまつげをパチパチさせてから母親の質問に答える。
「はい。お父さんの健康を考えると、ローティーンの葵さんの食事は気になるのはカロリーオバーだけではなく、塩分脂肪分糖質も過剰摂取になってしまいます。今日だけとおっしゃいますが、来週はお二人の結婚記念日で外食の予定も入っています。今日だけというのはそちらでするのが懸命だと思います」
父親はやれやれといった様子で肩をすくめてみせた。
「二人掛かりでそう言われちゃあかなわないな」
三人の笑い声に紫の頬はピクリと痙攣する。正体不明のストレスで頭が痒くなり後頭部を指でこすった。
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