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 仲良く談笑している両親とマザーGは紫がダイニングに入って来たのに気づくと微笑んだ。父親が紫に近づく。 「今日は大変だったね。津山さんとは仲が良かったのかい?」 「少し話をしたことがあったくらいかな」 「かわいそうにね。紫、カウンセリングの予約をしておいたから、明日行って来なさいね?」  父親のすぐそばにいた母親にそう言われて紫は顔を歪ませた。 「必要ないよ」 「マザーGはそう思っていないみたいだし。私もその方が良いと思うの。それに弓削くんと仲がいいなんて初耳だったわ」 「弓削くんと特に仲がいいわけじゃないの。今日たまたま、翠が弓削くんにケンカを仕掛けていたのを一番近くにいて見ていたのが私だったというだけカウンセリングなんて必要ない」 「それじゃあ、こう考えてくれない? 紫にはカウンセリングを受ける必要はないけど、私には紫がカウンセリングを受けることが必要なの。私が必要としてるの。ね? もうお願いだから、そんな顔しないで」  あくまでも自分のためだ。と言いくるめられた。最近はこんな風に入口や出口を塞がれている。もっと昔の母親はこんな風ではなかったように思う。マザーGの手口を学んだ末の言動なのかもしれないと思うと紫の中の嫌悪感が膨らんでゆく。  けれど、今ここで大きく反抗するわけにはいかない。弓削との約束を守るためには少なくとも、今日これからの数時間はいつも通りの自分でいなければ行けないのだから。  出来立ての状態が保たれているデリバリーのディナーボックスを開けて漂う湯気を見ながら今日これからのことに紫は決意を新たにした。
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