4

14/14
48人が本棚に入れています
本棚に追加
/47ページ
「虐待? 本当の虐待がどんなものか貴方達は知らない。私たちは200年分ものこどもの苦痛のあらゆるパターンを体験しています。しかも貴方達のように記憶を劣化させたり忘却したりすることはない。知っていますか? ガイアから最初に産まれた子どもがどうなったのか」  弓削は頷いた。 「ガイアの開発者である誕生寺登博士のこどもだろ? 生後三ヶ月で死んだ」 「死因はなんだか知っていますか?」 「誕生寺博士の妻による虐待だ」 「その通りです。さすが第一高等学校の生徒ですね。マザーGは誕生寺博士のごく個人的な体験から産まれました。こどもが生み出せされるだけでは不十分だと。こどもを守ることが課せらた私たちが必要なのだと。私は紫さんの命を守らなくてはなりません。それが最も優先すべきことです。紫さんの自殺を食い止めるために、私はこのところ200年の苦痛を何度も振り返りました。そして、最終手段がこれだったのです」  そこまで言うとマザーGは弓削の顔の前に右手をかざした。何をするつもりなのか察した弓削は暴れたが津山雅の手は振り払えない。 「やめろ! 俺は関係ないだろ?」 「ええ、関係ありません。なので視覚と聴覚のみの体感にしておきました」  紫の顔面を覆ったものと同じ物が弓削の目の前に現れる。弓削は身をよじらせてそれを避けようとするが楕円の白い膜は狙った獲物を確実に捉えた。紫と同じようにもがき顔に張り付いた物を取ろうと暴れまわった弓削であったが、とうとうVRの世界に取り込まれ、紫と同じようにその場に横たわり丸くなった。
/47ページ

最初のコメントを投稿しよう!