俺は十二単で出歩いた

2/4
25人が本棚に入れています
本棚に追加
/72ページ
「おじい様、おばあ様、そして皆様、本当にありがとうございました」  家から外に出た。外は太陽が照らす暑い日だった。俺は青い空を見上げる。太陽を見ないようにしながら、手でひさしを作る。  昼間なのに自分の母星をいつの間にか探していた。お尻まである長い黒髪が邪魔だ。  そして、地球の方には申し訳ないが、はっきり言ってこの服は動きづらい。俺はずるずる裾を引きずらせた。そのまま、墜落地点である竹やぶに向った。そこでこっそり救助を待つのが、一番迷惑がかからないだろう。  竹やぶに入ると、カシャっと言う、聴きなれない音が何度もする。その音の方向を見ると、一人の男性がカメラで俺を撮影していた。 「十二単(じゅうにひとえ)のお姫様だ。美しい……」 「写真を撮らせてください」  他の人も集まってきた。囲まれてしまった。おじいさんが大声を出しながら、肩で息をしながら走って来る。 「うちの娘は、見せ物じゃありません。撮影はお断りします。さあ、かぐや、家に戻りなさい」
/72ページ

最初のコメントを投稿しよう!