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【神さまといっしょ】
「うーん…」
気がつくと真っ白い部屋に居た。
「なんだここは…」
「気がついたようじゃな」
声のする方向に目を向けると白髪白ひげの痩せた老人が居た。
「ここは?」
「うーん、天国…ではないな、なんと説明したものかのぅ」
「そう言えばさっき階段から転げ落ちてような気がするのだけど…」
その割にはどこも痛いところが無い
「まぁ、簡単に言うとお主は死んだのじゃよ」
「え?」
「そう言った意味では、ここは死後の世界じゃな」
「そんな!バカな」
「自分の死因くらいはわかるじゃろ?」
「あ…やっぱりあの時のアレで死んじゃった?」
「そうじゃな」
「あっちゃー」
死んだということを突きつけられても
今一つ実感がないのはどこも痛くないからか…
「じゃーアレですか、天国に行くか地獄にいくか的な奴ですか?」
「ふーむ」
困り顔の老人。
「まあ慌てるでない」
「え?」
「ちょっと言いにくいのじゃが、お主に今死んで欲しくないのじゃよ」
「え?なんですかそれ」
「ええとな、お主は将来やるべきことがあり、今死んでしまったのは予定外なんじゃ。」
「へ?」
「いわば宿命というやつを背負っているのじゃな」
「宿命ですか」
「うむ、宿命じゃ」
「宿命を持った人間が死んでしまうと、かわりに他の人間に宿命を負わせたり色々と調整が必要でな。めんどくさ…」
「いや、ゴホン。」
老人は威厳をはらんだ声で言い直した。
「お主には、まだ今からやるべきことがあるのじゃ!」
(今、めんどくさいって言いかけなかったか?)
「では、生き返らせてくれるのですか?」
「無理じゃ」
「じゃぁ、やっぱり死んじゃうんですね…」
「これこれ、急ぐでない。今すぐには無理じゃと言っておるのじゃ」
「え?」
「お主の体は階段から転げ落ちて死んだせいで、あちこち壊れておるのじゃ
それを直してからでないと生き返らせることはできんのじゃ」
「じゃぁ、体を直してくれるんですね」
「ああ、そうじゃ。じゃがのぅ、少し、時間がかかるんじゃ」
「待ちますよ、生き返れるなら!」
「よし、生き返りたいという意思があることはわかった。」
「では…」と威厳を保ちつつ老人は続ける
「ここからは相談なのじゃがの、お主、しばらく別の人間になってみんか?」
「別の人間として生まれ変わるってことですか?」
「いや、ちょっと違う。」
「お主の体は直して、いずれそちらで生き返ってもらうがの。
それまでの間、別の人間として生きていて欲しいのじゃよ」
「なんでまたそんなまどろっこしいことをするんです?」
「今、お主は肉体から分かれた魂だけの状態になっておるのじゃ」
「え?」
「自分の体を見てみよ」
そして視線を下へ向けると…
え?
俺の体…手足はどこに行った?
なんか、宙に浮いているような気もする。
コレが魂だけの状態ってことなのか?
「コレがそうなんですか?」
「そうなんじゃ」
「それでな、魂というのは肉体という入れ物に入れておかないと散り散りになって無くなってしまうんじゃよ」
「へぇ、そうなんですね」
「そこで、しばらく別の人間の中に入っていて欲しいんじゃよ」
「まぁ、アレじゃな。魂を保温容器に入れとくみたいなもんじゃ」
「はぁ」
「もちろん、こちらの都合で別の人間になって欲しいなんて言っているのじゃから、ある程度のリクエストは聞くぞ」
「じゃあ・・・」
「始めに言っておくが、世界一の金持ちになりたいとか、ハーレム王になりたいとかは無理じゃからな」
(ギクッ。)
「あくまで体が治るまでの仮の姿なのじゃから
あまり世界に影響が大きいと、それはそれで問題なのじゃよ」
「お主と同じくらいの姿で大体同じくらいの生活をする人間になると思って欲しいのじゃよ」
「そんなもんですか」
「そんなもんなんじゃ」
そうなると大して選択肢なくないか・・・?
あ、そうだ。
ならば。
「あの」
「なんじゃ」
「バブル時代に転生する事はできますか?」
「なんじゃ、そのバブルというのは?」
「今から30年ほど昔の日本です。」
「ほう、過去の日本で暮らしてみたいと?」
「うーん、そうじゃな…まぁ、良かろう」
「マジですかっ?」
「神に二言はないのじゃよ」
(この人、神様だったんだ…)
「今、何か失礼な事を考えなかったか?」
「いえいえ、とんでもない!」
「ちなみに過去にいけるという事は未来にも行けるんですか?」
「未来のう…行ける事は行けるんじゃが…」
「じゃが?」
「未来というのは現時点で確定しておらんのでの
いわば未来の世界の建設予定地じゃからな。
何もない世界じゃぞ?」
「そうなんですか」
「そうじゃなー、光も音も地球もまだ用意されてない空間。
アレじゃな、お主らのいうところの宇宙空間に放り出されるようなもんじゃな」
「まじですか?」
「まぁ、どうしてもというなら送ってやらんでもないが…」
冗談じゃない。
「じゃあ、過去で良いです。」
「そうじゃな、それが良かろう」
「では、30年前の過去の世界に転生じゃな」
「しばらく過去の世界を楽しんでおれ。」
ではまたの~。
そんないきさつがあり
俺は過去の世界(バブル時代)に転生することになったのだ。
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