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神よ、お許しください。私は嘘をつきました。
あの方に書いた最初の手紙、あれはすべて嘘でした。確かに私の窓からは教会の工事の様子が見えましたが、あの方が塔を振り返り、手を振ってくださったというのは嘘です。あの方はただ、空を見上げただけです。太陽の光を遮ろうとして、片手を挙げただけなのです。
私はそれを見ていました。そして考えました。もしもあれが私に手を振ってくださったのだとしたら、どんなに嬉しかっただろうと。それは虚しく、楽しい空想でした。手紙を書いてみました。出してみようかと考えました。どうせただの戯れです。あの方も、このような手紙をもらっても一笑に付して捨ててしまうだろうと、軽い気持ちで届けさせたのです。
そうです。すべては冗談でした。
私の窓からは教会が見えます。時には愛を誓う場面を目にすることもあります。それを私は羨みました。私も愛を知りたいと思いました。恋をしている振りがしてみたかったのです。
まさかあの方が本当に手を振ってくださるなどと、思いもよりませんでした。
あの日から、まさしく私は恋に落ちました。いみじくも最初の手紙に書いたように、寝ても覚めてもあの方のことを考え、あの方のお姿を見るだけで幸福な心持ちになり、狂おしいほどの熱情に焼かれることになりました。
想像もしなかったような、幸せな日々でした。
恋とはかくも甘いものだったのかと、私は天にも昇る心地でした。楽しく、嬉しくて、同時にどこか苦しくもある、とても素晴らしいものでした。生まれて初めて、生きていることを喜びに感じました。
しかし、すべては嘘の上に立っているものでした。あの方にお話ししなければならないのに、私はとうとう最後までお話しできませんでした。あの方に嫌われるのが怖かったのです。私は浅ましい愚か者でした。自分可愛さであの方を騙し続け、傷つけてしまいました。
あの方が私に、どれほどの優しさと真心で触れてくださったか。それを思うと、私は真実をお話しすべきでした。
私は罪びとです。死はそんな私への罰なのです。
神よ、私はあの方を愛しています。どうか、あの方には幸福が訪れますように。
レアディール・クランバイン
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