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教会の工事をなさっている、右目の傷の方へ
私はあなたのお名前を知りませんので、どう呼びかけてよいものかわかりません。ご無礼かとは思いましたが、右目の傷の方と呼ばせていただきます。
あなたを知ったのは、先月のことでした。あの恐ろしい嵐の後、教会の工事が始まりましたね。人々が働く様を見るのは、私のささやかな楽しみなのです。その中に、あなたを見つけました。最初は他の方と区別がつきませんでしたが、ある時、あなたは後ろを振り返ったのです。そうして、私に手を振ってくださいました。
その時の喜びは、とても言葉で表すことができません。私に気付いてくださった方がいた、それだけで、私は天にも昇るような心持ちでした。
私の日々はあなたを中心に回るようになりました。朝、工事が始まる頃に窓へ行き、あなたを捜して、そのお姿を眺めることが私の喜びになりました。あなたがもう一度こちらを向いて、手を振ってくれないだろうかと、夢見るようになりました。
あなたの精悍な顔、逞しい腕や背中、日に焼けた健康的なお姿を見ておりますと、胸がひどく高鳴るのです。寝ても覚めてもあなたのことばかりを考え、時にはぼんやりと何時間も過ごすこともあります。
このような想いは初めてです。色のない、灰色の日々を暮らしていたのに、いまではすべてが色鮮やかに見えるのです。
あなたがお困りになるであろうことは承知しています。申し訳ないと思います。ですが、私の生涯ただ一度のこととして、どうしてもあなたにお伝えせずにはいられませんでした。
身勝手をどうぞお許しください。
レアディール・クランバイン
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