128人が本棚に入れています
本棚に追加
1
「ずっと我慢してたけど……忠成君の、獣臭いニオイが苦手だったの」
その言葉とともに、俺は半月付き合った彼女に呆気なく振られた。
正直、ショックだった。
だって、俺の家に来てそのニオイの元と戯れていた彼女はとても幸せそうで……。
まさかそんなに嫌がっているだなんて思いもよらなかったんだ。
人間、慣れというものがある。だから長年親しんだ自分のニオイには疎くなる。
それは十分承知しているつもりだった。
普段から母親に「あんたの部屋は何とも言えんにおいがするねぇ」と言われていた俺は、彼女に会う前は極力身だしなみに気をつけるようにしていた。
当然、汗をかいたらシャワーを浴びるぐらいの配慮はしてデートに臨んでいたのだ。
それなのに――。
俺は残念ながら自分の汗臭さには気付けても、一緒に暮らしているフェレット――イタチ科の小動物――のニオイにはかなりのところ鈍感になっていたらしい。
最初のコメントを投稿しよう!