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「ずっと我慢してたけど……忠成(ただなり)君の、獣臭いニオイが苦手だったの」  その言葉とともに、俺は半月付き合った彼女に呆気なく振られた。  正直、ショックだった。  だって、俺の家に来てそのニオイの元と(たわむ)れていた彼女はとても幸せそうで……。  まさかそんなに嫌がっているだなんて思いもよらなかったんだ。  人間、慣れというものがある。だから長年親しんだ自分のニオイには疎くなる。  それは十分承知しているつもりだった。  普段から母親に「あんたの部屋は何とも言えんにおいがするねぇ」と言われていた俺は、彼女に会う前は極力身だしなみに気をつけるようにしていた。  当然、汗をかいたらシャワーを浴びるぐらいの配慮はしてデートに臨んでいたのだ。  それなのに――。  俺は残念ながら自分の汗臭さには気付けても、一緒に暮らしているフェレット――イタチ科の小動物――のニオイにはかなりのところ鈍感になっていたらしい。
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