犬勇者の受難 序章

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犬勇者の受難 序章

2階の1番いい部屋の窓の向こうからは、伊豆山とか言う小高い山と、麓に並ぶ古ぼけた瓦屋根が見えた。 どうしたもんかね、この状況。 フラさんと二人っきりで温泉を満喫しようと思っていた。 そうこうしていると、突如ベッドの上でミラージュは言ったのだった。 ちょうど、ウエスト・ランドで起きた、フルオリハルコンゴーラ、もとい銀龍の暴走と、火神マルグリウスの妻の女神イルミナティ降臨騒動を越え、魔王が、こっちとの転移法陣を結んだ直後のことだった。 日本でしょ?!火山帯じゃん!どこにでも温泉があるじゃん!異世界温泉でイチャイチャしましょう! そして、あれよあれよと言う間に全員が集合した。 他にも来たがった。ルルコットとかブリュンヒルデとか。 ブリュンヒルデはあえなくご禁制品所持の罪で書き取りの刑、ルルコットにはケージの生き物の世話を頼んでいた。 子供達は心配だったが、リーゼロッテに全員の世話を頼んであった。 最近、子育てを通じてリーゼロッテと仲良くなって、嬉しそうに孫の面倒を見てくれるのが、妹のプリムと母親のメグミカ・エルネストだった。 大丈夫かな?今年で3歳になる娘のステラは、1歳の頃既に転移魔法を覚え、この前は偶々月から降りてきた魔王の耳をかじりに来た。アカデミーからサウスフォートまで転移魔法を連発したのだ。あのかつての赤ん坊は。 自由すぎなんだよな。王女になっちゃったからな。あいつ。誰にも止められなくなっちゃったしな。 慌てて迎えに行った時、魔王の耳は歯型だらけでボロボロになっていて、髪はボサボサだし酷い有り様だった。 もう乳歯全部生え揃ってたしな。 あとフェリックスはリーゼロッテの匂いを覚えて以来、リーゼロッテがいないと泣くんだよな。 リーゼロッテを妊娠させる気はないけれども。 さて。既にイゾルテ相手にしちゃっていて俺の残量は早くも切れた。 回復させないとな。 6人いるんだもん。奥さんが。と言うか子作りした恋人が。 ここんところ、全然寝れてないしなあ。 ついこないだ150メートルになったばかりだし。 ああそう言えば、同志ゴーマがこっそり持たせてくれたこれがあったな。 さっさと着替えていた浴衣の懐から取り出した小瓶の中には、妙に高い魔力と甘い匂いがしていた。桃か。桃ジュースか。 ルルコットがやらかしたの覚えてるよな?ジョナサンウッドドラゴン死んじゃったんだよな。 俺の名前がついたのに。 あえなく有害生物になっちゃったんだよな。 誰も悪くないのに。 よし!ゴーマを信じよう。 ジョナサンは、仙桃ジュースを飲み干した。 ジョナサン史上最悪な日はこうして始まったのだった。
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