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抜け駆けのサービスエリア
バスの中はガヤガヤと騒々しかった。
「ちょっと、当たり前にダーリンの隣座らないでよエメルダ」
「偶然の産物。先生。私メルがいないからおっぱい大きいよ」
おいてきた息子のことを差し置いてそんなことを言う最強テイマーの首長の姿があった。
「そうだな。ステラもフェリックスも元気だといいな。ああ。うん」
愛人の開いた胸をチラ見した犬の姿があった。
「アリエール!あんたは何?!何でダーリンの手を繋いでるのよ!」
「マリルカがさっさと乗り込んだからこうなってますの!宅の主人が何か?」
「ダーリンの対面に座ったフランチェスカはスカート中こっそり見せてるし!そう言うのはミニスカートでやってよ!」
「ジョナサンの好みを知らないのね。密着だけが全てじゃないのよ」
ジョナサンの視線はフランチェスカの足に釘付けになっていた。
「そもそも何でそこにいるのよユノおおおおおおおおお!膝の上から離れろおおおおおおおおおおおお!」
「いつもの定位置です。ぎゅー」
ユノは身をよじって頭をこすりつけた。
「いや。別に俺はだな。ところで、全員当たり前に授乳期なんだな」
車内は乳臭ではち切れんばかりになっていた。
はち切れそうなのはジョナサンの理性でもあった。
全員一列に尻向けて並べっつったら並びそうだった。
「いや、だから、サービスエリアに行ったら位置変えよう」
「私としてはイゾルテから離れられれば文句ないもの。貴方見ながらハアハアしてるけど。私の太腿に自分の太腿が当たってるのが嬉しくてしょうがないみたい」
「フランチェスカのここまでの色気を引き出したしぇんしぇいのエロさに驚きを隠せない。私は忘れてないもの。しぇんしぇいは温泉でマリオンを作った。正直二人目を狙っている。でもフランチェスカともっと近づきたい気持ちもあり、どうしたらいいと思う?しぇんしぇい」
「知るかあああああああああボケえええええええええええええええええ!」
車内はずっとこんなんだった。
サービスエリアで昼食を済ませた後、
「あれ?うちの人は?あとイゾルテは?」
茂みからこっそり戻ってきた。まくり上がったマセンダカラーのボディコンの裾を直しながら、イゾルテは額の汗を拭った。まだ結構暑い。
「うん。ちょっと何か食べてきていい?フラさん、俺腹減っちゃって」
気がついたらいなかった。レストランではマリルカとアリエールがマシンガントークをかまし、1時間は行方不明時間があったはずで、
「そんな時間ないわよ。置いていくわよ」
フランチェスカが冷たい声で言い放った。その側で、やりやがったなこいつ。女達は抜け駆けしたかつてのクラスメイトをじっとりと見つめていた。
イゾルテ・フレイア・エルネストは、気まずそうに視線をそらしていたが、その手は自分のお腹を幸せそうに撫でていた。
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